第19章 思い出 ☆彡
そんなつもりはないのに、
どうして気付かれてしまうのかな。
確かに朝から怠い。
自覚はあったけど、
更に天元にバレてしまった事で
気を張るのが意味のないことのように思えて
私は彼の胸にくたっともたれてみた。
「…ふぅ、ごめんなさい。ちょっとだけ…」
きゅっと支えるように腕を回してくれて
「おいおい、そんなにかよ。
ちょっと部屋で休め」
心配そうに私を除き込む。
あーあ、心配させたくないからがんばってるのに
これじゃほんとに意味ないや…。
でも…心配されるのって心地いい。
それを知ってしまった私は少なからず喜んでいた。
「んー…でもまだやること残ってるの」
「出たな。だめだ。強制終了」
「…そう言うと思った」
「当たり前だろ。…連行」
そう言うとそのまま抱き上げられ
何故か天元の部屋へと連れ込まれる。
私の部屋に押し込められるかと思っていたのに
「…なんでここなの?」
思いもよらない彼の行動に
不思議を感じてつい部屋の入り口で
口を挟んだ。
「ん?俺んとこならお前なんにもしねぇと思って。
俺も一緒に居れば尚更だろ」
「…そうか…」
私に何もさせない作戦という事なのか。
彼の言う通り、
自分の部屋でなければ何もする事がない。
小物を作る道具もなければ編み棒もない。
繕い物すら出来ない。
「ほら、いいから休めよ」
私ごと畳に座り込み
いつものように膝に乗せてくれて
ぽんぽんと背中を叩き始めた。
……
「寝かすつもり?」
「調子の悪ィ時は寝るに限る。
…しかもお前熱っぽいだろ」
おでこに手を当て熱をはかる。
あぁ…。
心配させているみたい。
私は覚悟を決めた…。
「うん。あの、熱っぽくて体が怠くて
風邪っぽいけど風邪じゃないの、
なんだかわかる?」
「んー?…なんだ、謎かけか?」
「違います。出来たんだと思うよ」
「ヘェ。…ん、何が…」
何が出来たのか、いいながら思い当たったらしく
徐々に目を見開いていく。
「……」
「…多分だけど」
「………」
私の顔を見たまま動かなくなってしまった。
「聞いてる?」
呆けた天元の目の前で手を振って
気を引いてみる。