第18章 嫉妬
「…ん…?」
「お前がムリな我慢なんかさせるから…
止まらねぇだろうが…」
口づけを深めるのに、
何となく、違和感…
「…お前笑ってるだろ」
「ふふ…ごめん…」
ここまでして甘い空気にならないとか
こいつはやっぱり手強い女だな…。
「だって…。どうしたの?
今日はなんだか可愛い…」
くすくすと笑いながら
愛しげに俺の頭を抱き寄せ
肩のあたりに乗せた。
「可愛いだぁ…?」
俺の声色が変わった事に気づき、
「あー…っと」
ごまかすように、するりと腕を
俺の首の後ろに回して抱きついてくる。
「…違うの、ごめんなさい」
謝ってももう遅ぇ。
絡み付いた腕を無理矢理引き剥がし
ぐっと顔を近づける。
「この俺に対して、可愛いと言いやがったかぁ?」
怯えたように俺の目を見つめながら
小さく首を振って否定した。
……いや、はっきり言っただろうが。
「天元は、立派な男の人です!かっこいいの!
すっごく素敵!頼りになるし男らしい!」
「……ほぅ」
「怒らないでよぉ。だってウソは言ってないもの…
『可愛い』の何が悪いの?
私にしか見せない姿を喜んだらいけないの?」
悲しそうに目を伏せる睦に
俺はやられてしまいそうになった。
「…怒ってねぇよ」
ちゅっと額に唇をつけた。
睦が褒めてくれるから
もっと聞きたくなっただけ。
結局こいつには甘いのよ。
何があっても、許してしまうのだ。
「ホント…?」
「あぁ。もっと、褒めてくれねぇの…?」
「えぇ?…あー、もう…」
俺の思惑に気づいた睦は
呆れたように、…でもホッとしたように
ため息をついた。
「んー…。目がきれいで、優しくて。
いつもサラッと私を助けてくれるのが
かっこよくて大好き。
子どもたちの事も可愛がってくれるし。
それから、強い…っ」
頬を包み込み、言葉を遮り口づけを交わす。
もう充分だ。
睦がそれだけ想っててくれんなら
もうそれでいい。
俺が本当に怒っていない事がわかり
ホッとしたのか
睦は抵抗もせずに
ただ俺からの口づけを受けていた。