第18章 嫉妬
それを聞いて
睦は少し目を上に向け考え込み
「…うん、淋しい…」
素直に頷いた。
よかった。
そんなことない、
とでも言われたらどうしようかと思った。
「じゃ、こうしてた方がいいって事だろ?」
「うん……うん?…そう、なの?」
「違うのかよ」
「…でも今はコレ作りたいの」
「そんな目ェしたってだめだ。
少しでも2人の時間を取りたいの俺は」
絶対にまた言い返してくるだろう睦の
可愛らしい唇を塞ぐ。
きれいな髪を撫でてやると
さっきまでの抵抗がうそのように
甘えて唇を押しつけて来た。
でもその一瞬後には、
勢いよく離れて行き、
「あぁ…、」
失敗をしたかのような声を上げる。
「違う違う」
首を振って今度こそ体を起こした。
何事もなかったように
編み物を再開する睦に、
「おいこら、待てよ」
物申さずにはいられない。
「俺が寒ィっつってんのに!」
しかし睦は涼しい顔で、
「わかってます。だから、
早くにコレ終わらせちゃうから。
おりこうさんに待っててね?」
まるで子どもを相手にするような話し方をした。
そのまま流れるような所作で
俺の頬に口づけをし、
また作業に戻った。
俺はその頬に手を当てて
呆然と睦を見つめてしまった。
…なんだコレ。
この俺をガキ扱いすんのか。
だがそんな言われ方をして
何も言えなくなっちまう俺も俺だ。
こんな時のこいつには、強く出られねぇ…。
首巻きに嫉妬するワケにもいかず、
俺はただ、睦の手によって
単なる糸が首巻きになっていく様を眺めていた。
器用に同じ動きを繰り返す細い指。
真剣な目、きゅっと結ばれた意志の強そうな唇。
こいつが俺の隣にいるならもう、
それだけでいいかと思わせるほど愛しい。
それなのに、俺の邪心は溢れて来て…。
あの髪に触れてぇなぁ。
細やかに動く、このきれいな指を握りてぇ。
正座してると
いつもより更に小さくまとまって見える。
膝の上に乗っけてよしよしして抱きしめて…
いろんな欲求が胸の中を渦巻いた。
テーブルに肘枕をし、
その渦巻く衝動をこらえること1時間…
1時間って長いと思う。
ものすごく我慢したと思う。