第18章 嫉妬
ほんの少しだけ隙間を作ると、
「もう少し…待っ、て」
嬉しそうなくせに俺を睨んだ。
ちゅっと小さな口づけを繰り返すたび、
「や、」
何かしら文句を言ってくる。
がんばって拒否しているようだが、
うまくいかねぇなぁ?
喜んでいるようにしか見えねぇんだよ。
「嬉しい…?」
わざと訊いてやると
「…うん」
思いがけず素直に答えてきて、
「でも…ちょっと困る…」
上目遣いでこちらを見る。
ほら、コレだよ。
コレを無自覚の無意識でやってるんだとしたら、
こいつはホントに色仕掛けの天才だ。
俺をダメにする。
無自覚とはいえ、
俺だけにしてくれる事を切に願う。
「困ってるとこも可愛いの」
かぷっと唇に噛み付く俺に、
きゅっと顎を引いて更に抵抗を見せた。
睦月のために編み物を完成させたい思いと
俺からの誘惑とに揺れる睦は
どうしていいかわからずに立ち止まる。
「…続けていいぞ。勝手にやってるから」
隣から抱き寄せて、
自分の胸に睦の肩をもたれかけさせた。
頬やこめかみに唇を落とし
その髪の香りに酔う。
言われるまま、編み物を続けようした睦だが
「……」
大っぴらに愛情表現をしてみせる俺に
気が散らないワケがなく、
その結果、ふと手を止めた。
「待って。ムリです」
「何で」
「何でって…。こんな状況で
編み物なんかできないよ」
言いながら俺の胸を押し、
体を起こそうとする。
「こら」
両腕で捕まえた体を
再び胸に押しつけた。
「睦月が寒くてもいいの?」
「子どもは風の子だろ?
それより俺の方が寒ィわ」
「この、部屋あったかいと思う…」
こいつは……
わからねぇヤツだなぁ。
「寒ィからあっためてって言ってんだよ」
「…あぁ!」
合点がいったのか睦は目を見開いた。
そして眉をひそめると、
「またそんなこと言って…。
よくもまぁ飽きもせず私を構ってくれる…」
感心したように言った。
いや、…呆れてる?
「飽きるワケがねぇ。好きなんだから。
だいたい睦だって、
こんな事してもらえなくなったら淋しいだろ?」