第18章 嫉妬
「弥生と一緒に眠ってる」
そう、弥生と睦月、
いつもならそれぞれの部屋で休むのに
今日はお互い離れたくなかったようで
睦が用事をしている間に
2人一緒に眠ってしまったのだ。
「えぇ?もう?」
「あぁ。疲れたんだろうなぁ」
睦月はねぇねと寝る!と聞かねぇし、
弥生もじゃあおいで!と満更でもなさそうだった。
仲が良いのは何よりだ。
「俺らは?」
「…なにが?」
「ナカヨシ」
睦は少し顎を引く。
「仲はいいつもりだけど」
俺の腕からするりと抜けて
再び立ちあがろうとした。
「待て、どこ行くんだよ」
「たまに出来た時間くらい
好きに使いたい」
「俺がいるのに?」
「……じゃあ、天元も一緒に作る?」
「なにを」
「睦月の首巻き」
「はぁ?」
それがお前の時間の使い方か。
好きに使いたいなんて言うから
てっきり自分の事をすんのかと思ったのに。
結局、誰かの事をするんだな。
「だってさっき、寒そうだったんだもの。
弥生のはあるけど
睦月には作ってあげてなかったから
すごく気になっちゃって…」
そう言いながら
戸棚から編み物セットを取り出してきて
俺の隣に戻ってくる。
…隣に座ってくれるのか。
それを何となく嬉しく思いながら
睦のする事を見守っていた。
取り出したのは、毛糸玉。
「それ使うのか?」
この間、みんなで出掛けた際に欲しがった
睦好みの青色の毛糸。
珍しく物を欲しがった睦。
だから俺は喜んで買ってやった。
そういうコトか…。
やっぱり自分のためじゃなかったんだ。
俺はため息しか出ねぇ…。
「…なぁに?」
そんな俺を不思議そうに見てから、
棒針を使って見事に糸を編み上げて行く。
「なぁ…お前はさ、ホントに欲しいモンねぇの?」
睦は棒針の先に目を向けたまま
「んー…?」
少しうわの空で返事をした。
そして編む速さを緩めると
「欲しいものは、ほとんど手に入ってるの」
にっこりと微笑んだ。
「俺、お前に何にも買ってやってねぇけど」
「そんな事ないよ。
どこかへ行く度に
いっつも何か買ってきてくれるじゃない」