第18章 嫉妬
涙に濡れた瞳が
不安そうに俺を見上げている。
笑っていられるようにがんばるね
そう話していたらしい睦。
「…俺の前では、泣いてくれんの?」
都合よく解釈してもいいか?
え?と、小首を傾げる仕草が可愛くて
俺は更に睦を抱き寄せた。
「全部受け止めてやるから、
俺には甘えてもいいよ」
額に口づけを落とし、
愛しい存在を実感する。
ゴトっと荷物を落とし、
その手を俺の背中に回した。
張り詰めていたものをやっと解放した睦。
俺は心の中で弥生に感謝した。
本当は、上手に書けた文字の話をいち早くして
睦に褒めてもらいたかったに違いない。
なのに、先に俺に譲ってくれた。
今度なにか奢ってやらなきゃならねぇなぁ…
「睦…、
情けねぇ俺を、許してくれるか?」
答える代わりに
ぎゅうっと力いっぱいしがみついて来る。
それだけで、充分だ。
「愛してるよ。…睦が好きだ」
瞼や眉間、鼻先、頬…あちこちに口づけて
俺は睦に愛を伝える。
「……天元は、情けなくなんかないもん」
随分と時間が経ってから、
俺の台詞の一部を否定してくれた。
そんな律儀な所も可愛くて、
俺はつい笑ってしまった。
「そんなこと言ってると、
俺はいつまでもこんなだぞ?」
「そんな天元が、すきなの…」
小さく、でもやけにはっきりと
告白してくれる。
「あーあ、…調子乗るのに」
「いい。…でも、もっと強引でもいいよ?
昔みたいに」
「…何言ってんの?」
すっかり泣き止んだ睦は、
今やうっとりと目をとろけさせていた。
「天元になら、
ちょっと無理矢理されるのもいいの」
「…それは、…ナンのコトを言ってる?」
勘違いしてしまいそうな睦の言い方に
俺は一応訊いてみる。
「何の事って…だから……え?」
俺の言った事のイミを理解したようで、
みるみる顔を真っ赤に染めていった睦は
「ば、っばか!そうじゃなくて…!」
慌てて否定した。
でも俺はもう、そうとしか聞こえない。