第18章 嫉妬
そうだよな。
厳しくも優しい睦の事を
好きになるのは当然の事。
だが睦月は、俺と違って血縁者だ。
俺が嫉妬するような間柄じゃねぇ。
なのに何だ、この体たらくは…
俺は、眩暈がするほどの衝撃を受けていた。
「あんな言い方したら
お母さんもイヤになっちゃうよ?」
……
振り向くと、入り口に弥生。
「いつからいた…」
俺は深くため息をついた。
はいはい、俺が悪ィのよ。
「睦月と一緒に」
オイまじか。
全部聞かれてんじゃん。
「さっきのは睦月の勝ちだよ?
だってかっこよかったし。
私は断然、お父さんの方がいいけど」
こいつ、いくつだっけ…?
そんなバカな事を考えてしまう程
弥生が大人びて見えた。
俺と睦が初めて出逢った時くらいの年齢だろ?
…末恐ろしいな。
「ちゃんと謝らないとダメだよ。
お母さんのこと大切にしなくちゃ」
「…そうだな」
「そうだよ!
私はお母さんの事を大切にしてるお父さんが
かっこよくて大好きなんだから」
「弥生…」
励ますような物言いをされて
目が覚めたような気がした。
頬を打たれるよりも効果的。
俺は弥生のそばにより
思い切り抱きしめた。
「お前が一番かっこいいわ」
そう褒めてやると、
あははと嬉しそうに笑ったのだった。
「かぁか、ごめなしゃい…」
睦月の部屋に着き、下ろした瞬間
いきなり謝られた。
どうしたのかと覗き込むと
いっぱいに涙をためていた。
「何が?」
「とぅとに、…えらそにして、ごめなしゃい…」
俯いて、本当に反省してるような顔をした。
よくわかってるな。
「大丈夫だよ。私をまもってくれてありがとう。
睦月、かっこよかったよ?」
頭を撫でてあげると、
心底ホッとしたように顔を上げる。
「後で、謝ろうね」
「…んー…」
肩をもじもじと揺らしている睦月に、
「一緒に行こう?」
お誘いをかけるように言うと、
少しだけ頬を染めて
「うん!」
勢いよく私の腕をつかんだ。
謝るのって、不安だよね。
私でもそう思うんだから、
こんなに小さな睦月は余計だろう。