第18章 嫉妬
誰にもあげない、と言われたような気がして
柄にもなく胸が高鳴った。
その後、そんなの長く続かねぇよ、
のつもりで俺が言った
『いつまで言ってくれるかな』の台詞にも
追い討ちをかけるように弥生は
『ずっと』と言った。
睦は撃沈だったろう。
申し訳ないが、弥生が可愛くなってしまった俺は
嬉しい、と答えてしまった。
睦が考え込んでしまう事はわかっていた。
でも、
弥生は単純に、睦の手伝いをしたいんだと
本気で思っていたんだ。
なのに、弥生の真意を思いがけず知ってしまい、
少なからず俺は浮かれた。
可愛い娘にそんな事を言われ
喜ばない男がいるだろうか…
でも、睦には
ちょっと配慮が足りなかったかなと
反省する部分もあった。
なのに…睦が
あんまり可愛く妬いてみせるから
嬉しくなっていく自分もいて…。
だからって妬かせて楽しむほど悪趣味じゃねぇ。
ただ、弥生が可愛かった。
「それでも睦の方が可愛いけどな」
つい口走った俺の台詞に
「…誰と比べて?」
じろりと睨む。
それが、睦からの愛の告白に聞こえた俺は
「…お前、俺のこと大好きだな」
浮かれて余計な事を口にした。
睦は憎らしそうに眉を寄せて
「またそうやってはぐらかす」
口をへの字に曲げた。
「誰とも比べたりしてねぇよ。
睦は睦だろ。
俺の可愛いオヒメサマ」
「可愛いのは私じゃないでしょ…」
顎をつかんでいた俺の手を退けて
俯いてしまう睦。
…あらら、本格的に落ち込んでやがる。
悪いクセが出始めたか。
「娘に本気で妬いてんのか?
…バカだなぁお前は」
愛しい睦。
そしてやっぱり可愛い。
「どうせばかですよ」
いじけたような台詞をはく。
「お前がバカなら、俺は大バカだ」
身をかがめて、もう一度唇を奪った。
振り向いて見上げる姿勢の睦は
俺から離れようとするものの、
作業台に押し付けられているので
うまく逃げられない。
音を立てて唇を離すと、
「こんなとこで…」
キッと睨んで顔を背けようとした。