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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第18章 嫉妬





…なんだろ、これ。

私は胸のあたりを押さえた。

いや、そんな事より、

私は台所に入ってもいいのかな。
わざわざ、天元の部屋にやってきて
何かを『お願い』していた弥生。
天元も、わかってるふうだった。
私には内緒の事なのかな…
なんとなくそう思ってしまい
中に入れずにいた。

「かぁか」

そんな私の袖を引くのは、小さな睦月。
さっきまで弥生の隣に立っていたはずの睦月が
なぜ私がいる事に気づいたのかわからないが、
私の少し後ろに立ち
心配そうに私を見上げていた。

「あ…なぁに?」

うまく言葉が出てこなくて
私はしゃがんで睦月と目線の高さを合わせた。
すると睦月は、
私の手を引いて無言で歩き出した。

あれれ、どこかへ行くのかな…

「睦月?いいの?お料理してたんじゃない?」

少し心配になって訊いてみるけれど、

「…いい。ねぇねがつくってるの」

自分はいいのだと淡々と言った。
睦月は弥生とは真逆の性格。
見事に分かれた。
誰に似たのか、ひどくおとなしい。
…さすがに私でも、
ここまでおとなしくはなかった、と思う。
顔は天元まんまなだけに、
こうおとなしいと何となく心配になる。
……いや、似ているというだけで
この子は天元ではないのだから
心配などすることはないけれど…。

睦月が私を連れて行ったのは庭だった。
きれいに咲いた水仙の前まで来ると
立ち止まり私を見上げた。

「わぁ!咲いたのね、睦月の水仙!」

球根を自分で植えて、
水やりや雑草を抜くのを繰り返し、
正真正銘、睦月が育て上げた水仙だ。

「きれいだねぇ!おめでとう睦月」

花の前、睦月の隣にしゃがみ込んだ私を
じっと見つめる睦月は、
きゅうっと私に抱きついて

「かぁかにあげる」

穏やかに言った。
照れ屋さん、という言葉で片付けていいものか、
感情の起伏があまりない睦月。
たまに心配になるけれど、
稀に見せるこの笑顔がたまらない。
宝物でも見つけたみたいな気持ちになる。

「せっかくさいたのに、
お母さんがもらっちゃってもいいの?」

からかうように言う私の顔を
きれいな瞳で見つめながら、

「かぁかのためにそだてたの」

真剣な声を出した。



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