第1章 嚆矢濫觴
おばちゃんへのおかゆも忘れずに。
そして私は、自分の店に行き、そちらを開ける。
変則の開店時間を知ってくれていたお客さんが、
待っていたかのように入ってくる。
私はそこでも、お客さんをさばく。
でも15時には閉店。
またおじちゃんのお手伝いだ。
おじちゃんが気にするから開けたけれど…
…私のお店、しばらくお休みしようかな。
結構つらい…
今度は夕飯の買い物客に向けたお惣菜づくりだ。
ほうれん草のお浸し、揚げ出し豆腐、
肉じゃがにコロッケ、里芋の煮物など、
おじちゃんはたくさんのおかずを器用に作り上げていく。
おじちゃんもおばちゃんも、
毎日毎日、
当たり前のように仕事をこなしていたけれど
結構こたえるんじゃないだろうか。
それとも、慣れたらなんて事ないのかな。
私も、自立するまでずっと、
ここの手伝いをしていたけれど、
所詮、2人のオテツダイ。
おばちゃんの代わりをするのは初めて。
思った以上の重労働だ。
「疲れたかい?」
手の止まった私に、おじちゃんが笑う。
「あ、違うの。
おじちゃんもおばちゃんも、
こんなに大変だったんだなって…」
「ははは。慣れてるからな、俺たちは」
「尊敬するよ」
私は笑みを作ると、再び手を動かす。
客足は増えつつある。急がなくちゃ。
主婦の多いこの時間、
愛想にも気をつけなくちゃ。
いや、昼間もそうだけど、より一層だ。
なんせおばちゃんは、
この辺りでは評判の、みんなのお母さん的存在。
あちこちから注文がとぶ。
にこにこしながら、聞き逃さないよう耳を働かせ、
その通りに手を動かして、
お客さんを間違えないように商品を渡す。
お金を受け取り、
おつりを返すとすぐに次の注文。
あぁ、てんてこまい。
接客は慣れている。
でも、この忙しさは初めてだ。
がんばれ私。
笑顔で。
目まぐるしい忙しさも、
ようやく一段落。
もう17時をすぎている。
でも、仕事は終わりじゃない。
おじちゃんが売り上げを確認している間、
量り売りのお惣菜を入れていたバットたちの
片付け、夕ご飯を作って、洗濯物をたたむ。
おじちゃんはまた、おばちゃんの様子を見に2階へ。
…お風呂でも沸かそうか。
私は立ち上がりお風呂場へ。