第17章 愛月撤灯
「あの…お願いだから早とちりしないでね?
確定じゃなくて、
そうかもしれないって話だよ?」
「…あぁ」
「後でがっかりさせたくない」
「大丈夫だ。今回もし違っても
またすぐ作るから」
本気で言ったその言葉に
睦はふっと笑った。
笑ってる。
恐れは、ないようだ。
…よかった。
「なら、今話しておいてよかった」
睦もホッと息をつく。
ホント、止めてくれてよかった。
いつもみたいに、
好きに抱き潰す所だった。
はっきりするまで無理させたらいけねぇ。
「…そうだ、こんな事してる場合じゃねぇな。
早く休もうぜ」
「え、うわ…」
驚いてしがみつく睦を、
力いっぱい抱きしめて立ち上がる。
「俺んとこでいいか?」
「…うん」
呆けた睦は
ぼんやりと返事をした。
「寝ててもいいけど」
「…山ひとつ越えるんじゃないんだから…」
ふふと笑う睦は
「そんな短い時間じゃ
さすがに寝られないよ」
トンと俺の胸を小突く。
そんな睦に見惚れた。
ほんの少し…
ほんの少し状況が変わっただけの事。
それだけで世界が変わって見える。
睦が、より愛しく見える。
俺の視線に気づいた睦は
ポッと頬を染め
「な、何?」
ふいっと顔を背けた。
「可愛い」
「いやー!」
大声で叫ぶと、これ見よがしに耳を塞いだ。
「なんじゃそりゃ」
俺がぷっと吹き出すと
「もー何ですぐそんな事言うの!」
「いいだろ、ホントのことだ」
「わざわざ口に出さなくてもいい!」
「まだそんなに照れんのかねぇ…
こんなに言い続けてんのに」
「もういいから!」
「だから、そういうとこが可愛いんだよ」
「もういいって!」
睦の両手が
俺の口を塞ぐ。
んな事しても
「ひゃべれるけどな」
「だまってて!」
……わかりましたよー。
「……で?」
おうちの居間。
テーブルを挟んで天元と対峙。
腕を組み、いつに無く真面目な天元は
じっと私の言葉を待っていた。