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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第17章 愛月撤灯





その対価を、
私のためになげうってくれるというのだ。
慈愛に満ちていて、美しいひと…

「…睦さん…?」

しのぶさんは驚いたように目を見開いた。

「…は、い?」

「…涙を流すほど嬉しいんでしょうか?」

「…涙…」

あ、ほんと。
私泣いてる。

「やだ、ごめんなさい!
なんだかちょっと情緒不安定みたいで。
泣いたり笑ったり忙しいなって
よく言われるんです。
どうしちゃったのかな…」

私は頬を伝う涙の跡を拭った。

「他には…」

「え?」

しのぶさんは、少し遠い目で私に問う。

「他には何か、いつもと違う所はありませんか?」

もしかしたら、貧血以外にも悪いところが
あるのかもしれない。
そう思うと怖くって、
私は必死に考えた。

「…なんだろう…他に…?えぇと…
眩暈でしょう…?
ごはんがおいしすぎて食べすぎちゃうのと、
そのせいで気持ち悪くなって…」

…食べ物?食べ物といえば。

「食べ物じゃない物を食べたくなる時があります…」

「……」

しのぶさんは呆れているように見えた。
まぁ、みんなこんな反応をするだろうな。
どれだけ食い意地が張ってるんだと
驚くことだろう…
そんな話をしてしまったのを
少し恥ずかしく思った。

「…もしかして睦さん、」

しのぶさんは言いながら
私のおでこに手で触れた。
熱をはかる時のように。

ほぼ、お医者さんだと思っている私は
この人のする事にどきどきしてしまう。

何か、悪い所があるのかな。

おでこにあった手が、
今度は手首に移動して脈をはかり出す。

「しのぶさん、私どこか悪いですか…?」

おそるおそる訊いてみると、
しのぶさんはにっこりと笑顔を貼り付けて

「いいえ?どこも悪くありません。
わざわざご足労いただいて
申し訳ありませんでした。
さ、行きましょうか」

しのぶさんは立ち上がった。

「え?行くって…どこに?」

「どこって…もちろん睦さんのお宅ですよ?」

私の手を取り、そっと引き上げる。

「私の…。しのぶさんも?」

「はい、ご一緒してもよろしいでしょうか?」

「…ええ、もちろんです…」




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