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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第17章 愛月撤灯





その瞬間、
睦がにこっと笑ったのが見えた。

…こいつめ。

「おいこら睦」

窘めるように呼んでやると
そろりと俺の胸に顔を隠した。

「演技したな。眠たいなんて言って…」

「もう寝た」

「うそ言え」

俺はくくっと、笑いをもらしてしまった。
睦も声を殺して笑う。

「運んでほしいなら素直にそう言えよ」

「はぁい」

「嬉しそうに笑いやがって…」

可愛いだろうが。






今日は1人でお買い物。
いくらべったり仲良しの私たちでも、
たまには離れる時間も必要だ。

秋も深まったが、
日中の日差しはまだ強い。
風は涼しい。
この感じがたまらなくいい。

私は今日の献立を考えながら町を行く。

…と、
前から知っている顔がやって来た。
向こうも私に気がついて、
にっこりときれいな笑みを浮かべてくれる。

「こんにちは、睦さん」

そう声をかけてくれたのは
しのぶさんだった。

「こんにちは!お久しぶりですね。
お元気ですか?」

「はい、おかげさまで。睦さんは…」

私の顔をしげしげと眺める。
…しかも、なにやら深刻そうに。

「…何事でしょうか…。
私、何かおかしいですか?」

この人は年若いが薬学を学んでいたようで
お医者のようなこともできる優秀な女の子。
そんな人に、こんな目で見られると
どこが悪いのかと不安になる。

「……いいえ?大丈夫です」

にっこりと笑われた。
…不安だらけです!

「睦さん、少しお時間ございますか?」

「えぇと…お昼ご飯の用意をする時間に
家に戻れるのなら…」

「はい。それはご心配なく…」

穏やかに微笑み
しのぶさんは私の背に手を添え、
どこかへ誘導して行った。



連れてこられたのは
しのぶさんのお屋敷だった。

「……」

以前のような賑わいは無く
ひっそりとしたお屋敷は別の場所のように思えた。

「どうぞ」

座布団を勧められ、

「…ありがとうございます…」

私はそこに座った。

「そんなにかしこまらないで下さい」

くすくす笑うしのぶさんは
私に深刻な話をするようには見えない。
…なにか病気の宣告を受けるわけではないようだ。



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