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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第17章 愛月撤灯





睦は、ただ俺の目を見つめ
さっきの言葉を噛み締めているようだった。
あんな事を口にしてしまうなんて、
俺も極限だったのかもしれない。
余裕のあるフリをして、
そんなモノ、実はなかったのかもしれない。
もっと早くこうしていれば
睦もこんなに苦しまずに済んだかもしれない…

考えても仕方ない事ばかり考えてしまう。
『かもしれない』なんて、無意味だ。
俺には、

「ごめんな」

そうやって、睦の髪を、頬を、
撫でてやる事しかできない。
対応の遅い自分を悔いて。

だけど、そんな俺の言葉に、
睦は動いた。
大きな目に涙がたまり、
目尻から流れて落ちる。

「…ちがう…謝ら、ないで…?」

睦の手が、俺の頬に触れた。
赤く腫れているだろうそこに指を這わせ

「ごめんなさい…」

震えながら言った。
その手を取り、指を絡めて握る。

そんな事はいい。
先を……話の先を、俺は聞きたい。

「…こわい…こわくなったんだ」

俺の手を強く握り返した。
こいつの不安が伝わってくる。
真っ赤な目が、抱きしめろと言っているようで
俺は睦の体を片手で抱き寄せ、
向き合って側臥位になった。

つないだ手を抱きしめながら
睦は深呼吸をする。

「…私なんかが、母親になれるのかって、
…天元が、言ったの…」

………

「お、れ…?」

例えば、ハンマーで頭を殴られたくらいの衝撃だ。

「…言ってねぇし、思ってねぇ…。
そう思わせる、ような事、俺言ったのか…?」

「違う!ごめんなさい、私の、夢の話。
…天元が、そんなこと思ってないってわかってる。
…私なの…」

睦は、自分の中の恐怖を払拭するかのように
俺の手を強く抱きしめ直す。
そんな睦を安心させようと
更に強く抱きしめてやる。

「夢の中で、天元にそんな事を言わせたのは
私の不安や弱さだよ。
私は自分に自信がない。
母親になる自信なんてもっとない…
怖くてたまらない」

「…それを、どうして俺に言わなかった」

「言え、ない…」

睦は俺の目を見て咽び泣く。




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