第17章 愛月撤灯
それが何なのかはわからねぇが、
俺が押し切る事で打破できるのなら
一緒に乗り越えてぇ。
それでどうにかなるんなら、
憎まれ役だって買って出てやるよ。
俺は、口づけから
逃れようともがく睦を押さえ込む。
いつもなら、もう絆されている所…
「睦、…イヤか」
久しぶりの口づけに心震えるも、
眼前の睦は戸惑いしかないように見えた。
「俺が、イヤ?」
わざとそんな訊き方をする。
それは、
俺をイヤがっているようには見えないからだ。
何が俺を避けさせているのかを知りたい。
待てど暮らせど、返事をしない睦に
もう1度口づけた。
少しずつ身を引く睦を追って唇を合わせる。
いつもの、甘い雰囲気は微塵も感じない…
正座をしていた睦が、
畳の上に尻を落とす。
踵で畳を蹴って、少しずつ後退して行った。
しつこくそれを追いかけ
背に手を添える。
その背をぐっと引き寄せて
互いの胸を合わせたまま
2人で畳に倒れ込んだ。
その途端、
それまでとは比べ物にならない程の抵抗を見せた。
顔は真っ青、目の色を変え
全身をばたつかせて俺から逃れようと暴れる。
「睦‼︎」
俺はそれを力でねじ伏せた。
「離して!やだぁ…っ!どいて!」
この暴れ方は常軌を逸している。
こんなこいつの姿、見ていられねぇ。
見ていられねぇよ睦。
俺が大声を出し、こんなふうに押さえつけた所で
こいつの不安を煽るだけ。
そう思った俺は
睦の腕を解放した。
自由になった腕は、容赦なく俺を打った。
でもそんな事は構わない。
「睦、睦何が、怖い」
「いや!来ないで、どいてよ‼︎」
「睦、話せ。聞いてやるから。
きっと楽になる」
「いや、だ!」
振り上げた睦の手が、俺の頬を張った。
途端、睦の動きが止まる。
殴られた頬が熱い。
それでも俺は…。
「睦。いつまで、1人で抱え込むんだ…
俺を巻き込んでは、くれねぇのか…?
淋しい事すんなよ…」
俺は呆けている睦の頬を
そっと撫でた。
「お前に何があったっていうんだ。
俺がそばに居んのに、
こんなふうにさせちまって…ごめんな睦…」