第17章 愛月撤灯
そんなことを考えていると
ツン、と、眉間を指で突かれた。
「…こわいかお」
俺を真似て、
わざと眉間に皺を寄せた睦が
いつの間にか目の前にいた。
…お前のコト考えてんだよ。
呑気ににこにこしやがって。
俺はため息と共に
睦を腕の中に閉じ込める。
風呂上がりの睦は
「…あの…私まだ髪が濡れてるの。
天元も濡れちゃうよ?」
そう言って離れようとする。
…あの日から、睦は
俺とくっつこうとしなくなった。
近寄ろうとすると
それを察した睦は
スッと身を引いて行くのだ。
抱きしめると、
今みたいに何か言い訳をして逃れて行く。
この5日、口づけすらしていない。
…おかしい。
それまでは当然のようにやっていた事を
急に避けられている。
嫌われているふうでもなければ
怒っているふうでもない。
ただ、触れさせてもらえないのだ。
「睦」
「っ…はい」
びくりと震えて、緊張した声で返事をした。
……
「一緒に、休まねぇ?」
床も別、ってどういう事。
「え、っと…じゃあ、寝る準備をしてから…」
「もう出来てる」
俺は敷いてある布団を指差した。
「あ、そう、だね…。えっと…
ならお茶淹れてくるから、」
慌てて立ち上がろうとする睦を離すまいと
力を込めて抱き込む。
「茶なら今飲んだろ」
「……」
目を泳がせ、何かないかと
思考を巡らせているようだ。
「…睦」
俺が顔を寄せると
それに気づいた睦が急に焦り出す。
「あ、あの!待って、えぇと…
ま、まだ洗い物が残ってて、」
…さっき全部終わらせていたのを俺は知っている。
構わず睦の唇に、
「天元…っ!や…」
口づけた。
睦は力いっぱい胸を押し返し
顎にかけられた俺の手をひっかいた。
そんな抵抗、今の俺には通用しねぇ。
今夜は、睦を抱くと決めたんだ。
だって
こいつからは俺を嫌悪する感じがしねぇ。
何かに怯えているとしか思えなかった。
俺を拒否してるわけじゃなく、
何か別の所に原因があるって事だ。