第17章 愛月撤灯
青白い顔をして、
目も開けられない様子…。
顔にかかる髪をそっと払ってやる。
繰り返す浅い呼吸。
「ごはん、まだなの…」
「今はいい…。睦…」
「ん…眩暈が、ひどくて…」
「眩暈…?」
っつうか、これは貧血だ。
「睦、横になった方がいいな。
1度ちゃんと休め。
眩暈がおさまったら医者へ行こうな」
俺がそう言った途端、
カッと目を開き俺の腕からがばっと起き上がった。
「おい!そんな急に「いや!そんなこと言わないで!」
「…は…?」
急に動いたせいで眩暈が強くなったのだろう、
俺の胸元に両手でつかまり項垂れた。
もう動かないように
睦の体を抱きしめて固定する。
「今の、どういうイミだ」
ここ最近のうちで、
1番ワケのわからない発言だ。
「……」
ひどい眩暈に耐えているのか
睦は何も言わなくなった。
しばらくじっとしていたが、
「…大丈夫…」
ぽつりと言った。
「どこがだ」
「お医者には、いかない…」
「何でだ?」
「そばにいたい…」
「…お前、泣いてんのか…」
胸元の顔を覗き込むと
目を閉じはらはらと涙を流している睦。
これはいよいよおかしい。
「そばに、いるだろ?
俺、お前のそばにいるよな?」
体だけじゃなく、心も寄り添ってるつもりだ。
睦は、そうじゃなかったのか…?
苦しくない程度に抱きしめる。
「…とりあえず…布団敷いてやるから
ちょっと待ってろ」
両肩に手を置き、ゆっくり離そうとするが
睦は強くしがみついて離れなかった。
普段なら喜んでいるであろうこの状況。
それが、今は心配でしかない。
…こりゃあ話をするのが先か。
「睦、顔上げろ。ちゃんと話をしよう」
しがみつかせた手にぎゅっと力を入れてから
そろりと顔を上げた。
不安に揺れる瞳、
きゅっと下唇を噛み締めて
それでも俺の事を見上げてくれる。
よかった、
さっきは、顔すら見てもらえなかった。
「何か、あったな?」
髪に唇を寄せ、
できるだけ優しい声をかける。
睦は小さく頷いた。
……