第17章 愛月撤灯
お前の胸に、愛を刻み込んできたのは
間違いなく睦のため。
俺がお前を自由にしてぇからじゃねぇよ?
だから、俺の想いを押し付けるのは違う。
「ただ…?」
「睦が、愛しくて。この先も
そばにいてくれれば良いと思っただけだ」
「……」
睦は呆けて俺を見つめた。
何かを探るような目。
「…天元、遠慮しなくて大丈夫だよ?
……まだ、言いたい事が無い?」
睦 の言葉に、
笑うしかなくなる。
そう言う所は敏感だ。
これはもう、はぐらかしたらだめだろう。
「あぁ、思うことはある。ただ、
今言う事じゃねえと思ってる。
俺の中で整理がついたら必ず話すから
もうちっと、待っててくれねぇか」
俺の目に嘘がない事に気がついたのだろう。
「…絶対ね?待ってるからね?」
大きな瞳を揺らす睦。
お前こそ、愛しいよ。
ちゅっと唇を奪い、
「約束する」
頬を撫でた。
するとひどくホッとしたように笑い
再び俺を抱きしめた。
こいつの鼓動は、愛しい音楽のよう。
それを聴きながら眠れるなんて
至福の極み……
優しいぬくもりに包まれたまま目が覚めた。
こいつ、あったけぇな…。
しかも柔らかい胸元に
頬を押し付けられるというおまけ付き。
睦からこんな事をしてもらえるなんて
昨夜から幸せな連続で
おかしくなりそうだ。
起こさないよう、背中にそっと手を回す。
少しだけ顎を上げると、
睦の穏やかな寝顔。
いつも通り、安心しきって眠る顔が愛しい。
そんな愛しいこいつに
俺は胸の中で語りかけた。
…睦、怖い事ってあるよな。
こんな俺にも、あるんだ。
お前が、悲しむ事。
それだけは、何としても避けたいと思ってる。
なぁ睦、昔、お前を守るって言ったよな。
あの時、お前はよくわからねぇまま頷いただろう。
でも俺の覚悟はホンモノだ。
うまくいかねぇけど…
お前を泣かせちまう事もあるけどな、
でも睦の事を1番に考えてるんだ。
俺にはお前しかいねぇ。