第17章 愛月撤灯
不死川はくくっと喉を鳴らす。
「あいつ、お前にすぐ左右されるからな」
人のことをよく見てる。
睦の心配をしてくれてる、
1人の人間ってコトか。
そうか……そうだった。
「ありがとな不死川。俺に言えねぇことも、
お前になら話せるんだろうな。
そうやって睦が自分を保ててるんだとしたら
お前は貴重な存在だ」
「気色悪ィ気色悪ィ!やめろよてめェ」
不死川は震えて両腕を抱える。
「てめぇホントいい性格だな。
まぁ照れ隠しってコトだろ?
可愛いなぁさねみんは」
「黙れ!」
不死川の頬は、心なしか染まっていた。
何はともあれ、不死川がいてくれて良かったと
心から思った。
家に戻ると、茶の間に1人、
テーブルに頬杖を付き
庭を眺めている睦がいた。
テーブルには、
出来たてなのだろう、
湯気の立つ昼メシが所狭しと並べられていた。
俺に気づいた睦は
ぱっとこちらを振り返り、
「おかえりなさい。ごはん出来た所だ、よ…」
嬉しそうに言う睦をぎゅっと抱きしめた。
躊躇いもなく背中に回された両手。
「…何かあったの?」
…何かあったのはお前の方だろ?
「んー…睦が好きだ」
「はい?」
くすくすと嬉しそうにする睦は、
とても健康そうだ。
「睦、元気か」
「元気だよ」
「メシ食えそうか」
「うん、ちょっとにしとく」
「どれだけ食えば大丈夫かわかってんのか?」
「…食べ過ぎてたら止めて?」
「あぁ、止めてやる。…気分は」
「いいよ」
「吐き気は」
「ない」
「熱も?」
「ちょっとぽかぽかする」
「俺のこと好きか?」
「だいすきだ、よ…」
答えてしまってから
「何?ワナ?」
睦は頬を赤くする。
「違う。ホントに、俺だけ?」
「…何か、疑われてる?」
睦は、少しだけ眉を下げた。
「私、何か不安にさせるような事した?
…あ、昨日不死川さんとこへ行ったから?」
「そうじゃねぇの。お前が今、
どういう状態なのかを知りてぇだけだ」