第17章 愛月撤灯
「昨日の様子だァ?」
卓を挟んだ、向かいに座る男が唸る。
「どうでもいいけどよォ…
てめぇら夫婦で順番に俺んとこ来んなやァ」
「何でだよ。飽きねぇだろ、よかったなぁ
足繁く通ってくれるヤツがいてよ」
「睦ならまだいいぜ。
可愛げあるしなァ」
…にゃろう。
「俺も可愛いモンだろ」
「どこがだよ!てめェはでけェし邪魔」
「ひどいのね、さねみん」
「……で、睦の様子…」
無視かよ。
「おめェ、前も同じようなコト訊いてたよなァ。
どんだけあいつのことわからねぇんだよ」
「あいつ今、難しいのよ。
最近どうしたんだろうなぁ…」
何を見るでもなく視線を放り出した。
あー…何かした覚えはねぇしな。
「あぁ、あいつ何か変化あったのかァ?」
「変化?」
「環境の変化があったら
過食と拒食を繰り返すっつってたぞ」
「…そんなモンねぇだろ」
んー…変化…?
…ねぇだろ。
「…心変わりでもしてんじゃねぇの」
「んー…んぁ?」
ココロガワリ?
「んなワケねぇだろ!」
「…わかんねェじゃねえか」
「わかるわ!絶対ぇ違うね」
睦は俺のことが大好きなはず。
昨日も可愛く、口づけして…?なんて
すり寄って来た。
「気づかねェうちに、
いつの間にか愛する女の心には
別の男が入り込んでいたのだった…」
それっぽい顔で不死川は言う。
「てめぇ笑えねぇ冗談言ってんじゃねぇぞ」
「どうだろうなァ?」
にやにやと笑う不死川は
「それが睦の劇的な変化だったりしてなァ」
尚も繰り返した。
「絶対ぇ違うね。
あいつは俺のこと愛しちゃってるから」
「ヘェヘェ。おめでたいヤローだな」
頬杖をついて、呆れたように俺を見る。
「おうよ。あいつがどうなろうと
手放す気なんてねぇからなぁ。
睦の心を惹きつけとくだけの
自信が俺にはあるね」
「そうかよォ。恥ずかしげもなく…」
そう言った不死川は思いの外
優しい眼差しだった。
こいつ、何を考えてんだろうなぁ…。
「お前がそんな心づもりなら
睦も大丈夫なんだろうなァ」