第17章 愛月撤灯
「不死川さんとこの
わんちゃんに会いに行ってたから」
「おっ…前なぁ!」
さっきよりも怒気を含んだ大声に
びくりと体がすくんだ。
「俺の女だっつう自覚、まだねぇの⁉︎」
「…うん」
…あ、
「違う違う!あるよ。
ごめんなさい…勝手な事して」
言われて気づいたの。
またやっちゃったって。
ちょっと気が滅入ると、
すぐに誰かに頼りたくなる
弱い自分が嫌いだ。
天元だけじゃなくて
色んな人に寄りかかってしまうのは
この人に対して失礼だと思う。
思うのに…。
私って、結構な浮気性なのかな…
…でも、
「天元みたいに、
夜通しお酒飲んだりしないけどね。
同じ事よね」
「…何だ、おい」
「私、悪い子だったね。
もう外に出られないように首輪でつないどいて?」
「……おーい、睦ちゃんどうしたー?」
天元は私の目の前で手を振って見せる。
「自分では気づかないものなのね…
そうだよ、…大切な天元ほったらかして
手土産まで持って不死川さんとこ行って、
呑気に犬の名前考えて来たの。
私なんてサイテーよ」
あぁ、落ち込んでいく。
何が自分がされて嫌な事はしない、よ。
…でも私、例えば昼間に
天元が雛鶴さんとお出かけしたとしても
そんなにイヤじゃないや。
…だからって、
天元の嫌がることをしてもいいって事には
ならないけれど。
「待て待て、急にどうした」
怒りもそがれた天元が
私を心配し出す。
「お詫びと言ってはナンだけど
おいしいご飯を作ります…。
もう少し待ってもらえますか…」
おかしい。
自分でもおかしいのがわかる。
どうしてこんなに、
急に心が落ちていくんだろう。
ダメみたい。
「…その前に、口づけして…?」
「…は?」
「してもらったら、
ちょっと元気出るかと思ったんだけど…
だめなら大丈夫です…」
彼の腕をすり抜けようと身を翻した私を
慌てて引き止め
「いや、だから待てって。
わかったから…」
天元は私の髪をするっと撫でて、
流れるような仕草で私の唇を塞いだ。
あ、ほんとにしてくれるの…
怒ってたのに…。
……よかった。
離れた唇を追って、
今度はこちらからちゅっと口づける。
でもすぐに離れ、隠れるように
彼の首に強く抱きついた。