第17章 愛月撤灯
ふと庭に目をやると、
元気に駆けて来る可愛い子たちが見えた。
「あ…!不死川さん、
行ってもいいですか?」
「あァ」
急に優しい目になって笑い快諾してくれる。
私は嬉しくなって縁側に出た。
2匹の犬たちは私のことを覚えているようで
しっぽを振り回しながら飛びついてきてくれる。
「久しぶりだねぇ君たち!」
よしよしと撫でてやると
前足を私の膝に掛けて立ち上がり、
もっと撫でろとせがんでいるようだった。
不死川さんは、
飼ってるんじゃない、勝手に居着いただけだ、
って言うけれど
これは立派な飼い犬だ。
という事は…。
「不死川さん、そろそろこの子たち、
名前つけてくださいよ」
「名前ェ?んなモンいらねェ。
そいつらよそモンだぞ」
「…うそばっかり。エサあげてるじゃないですか」
「…それは…こんなトコで
餓死でもされちゃ気ィ悪ィだろ」
プイっとそっぽを向いた。
「えぇ…。もう、この家の子ですよね?」
「……」
「名前」
「るせェなァ。じゃお前がつけろ」
「えぇっ⁉︎ムリですよ。不死川さんの子なんだから
不死川さんがつけるべきです」
「俺の子って何だァ。妙な言い方やめろ」
むぅ、そうやってごまかして…。
「そこじゃありません。なんでちゃんと
してあげないんですか?ねぇ?」
2匹をぐりぐりと撫でながら言ってやると
「だから、お前がつけろ」
もう一度、同じことを繰り返した。
「…本気で言ってます?」
可愛い犬たちに名をつけろと強要され、
悩むこと1時間…。
無い頭を絞ってつけたというのに、
「…それは、安易にも程があるだろ…」
不死川さんは全否定…。
「だからムリだって言ったんですよ!
つけろって言ったのは不死川さんですからね!」
「だからって…じゃもし、もう1匹増えたら
『みぃ』になんのかァ?猫じゃねぇんだぞ」
ムカっ。
「うるさいお兄ちゃんだねー?
人につけさせといて
文句ばっかり言うなんてひどいわねぇ?」
「オイ…」
「ねー、ひいちゃん、ふうちゃん」
「…チッ」
犬の頭を撫でながら愚痴をもらしてやる。
わざと聞こえるように。