第17章 愛月撤灯
「うーん…半分だけ。今日、
蜜璃ちゃんと寄ったお店にあったんだけど
きっとサイズが合わないだろうと思って
大きくしてみたんだ。
もらって、くれる?」
…そういえば、
私から何かをあげるのなんて初めてだ。
すっごくどきどきするものなんだな…
気に入ってくれるかどうか、とか。
彼は何かを考えているようだった。
沈黙が、怖いな…。
男の人がこんなのイヤだったかな。
でもとってもきれいだったし…。
あぁ、だけど、
「イヤだった?そうだ、あのね?
自分のも買ってみたの。ほら、おそろい」
私は袖を少し引き上げて
自分の手首を見せた。
同じ色の同じ物。
「一緒につけたいなと思って、
つい買っちゃったの。…どう、かなぁ?」
彼の様子を窺っていると、
少し頬を上気させ、
「俺のために、買ってくれたのか…?」
長い腕を伸ばして私の頭を抱き寄せた。
たどり着いた彼の胸板。
「…見つけた時、
一番に天元の顔が浮かんだの。
私ね、お店をやってる時にね、
天元に贈るための何かを作りたくて…でも
作る事ができなかった。何も浮かばなくて。
でも、これを見て
天元にあげたいなって思ったんだ」
言い訳のように御託を並べる私の、
「…嬉しい」
唇を簡単に塞ぐ。
すぐに離れてくれると思っていたそれは
予想に反して徐々に深まって
この人の気持ちが流れ込んでくるようだった。
嬉しいと、言ってくれた。
贈りたいと思った物を受け取ってもらえて
しかも喜んでもらえるなんて、
こんなに嬉しいことがあるんだな。
「…睦、」
唇の隙間から、
優しく呼ばれた。
薄く目を開くと、
嬉しそうに再び口付ける。
「お前から何かをもらうなんて思ってもなかった。
こんなに、嬉しいモンなんだな…」
ぎゅうっと力いっぱい抱きしめられて
繰り返される甘い口づけ。
…ちょっと、こんな事を続けられると
変な気分になって来る。
どうしよう…。
頭が、溶かされる…
無駄だとわかっていながら、
少しだけ身を捩った。
思った通り、逃げられないように
ぐいっと正面を向かされ固定される。
「…逃がさねぇ。
口づけくらい、好きにさせろ…」