第17章 愛月撤灯
「…大丈夫、と思う。
少し怠いだけだから…ごめんね」
「いや、…昨夜ヤりすぎたかな…」
「え…ッ?そ、それなら、…
別に天元だけのせいじゃないから…」
おろおろと視線を彷徨わせ
頬を染める睦。
果てしなく可愛いな。
俺が、
悲しんでるお前を助ける天才だと言うのなら
お前は俺を骨抜きにする天才だ。
骨抜き?…腑抜け?
どちらにせよ、俺をダメにする。
原因が睦なら、まったく構わねぇが。
「…そろそろ、起きよかな…」
そそくさと体を起こした睦を
追うように背中から抱きしめた。
「無理して起きなくていい。
もう少しゆっくり休んでろ」
「え?でも…」
こいつが言いてぇ事はわかってる。
もう家のことやらなくちゃ、って言うんだろ?
「俺がしといてやるから
睦はまだ横になってろよ」
振り返り見上げる睦は
「そんな事できないよ」
焦ったように言った。
「天元が働いてるのに
私だけごろごろしてるなんてムリ」
…まぁ、こいつの性格上そうだろうな…
じゃあどうしてやればいいかと言えば。
「なら、一緒にこうしてるか…」
睦ごと、再びごろりと横になる。
「うゎ…」
驚きの声を上げ、咄嗟に俺にしがみついた。
「でももう、寝坊しちゃったし…」
「寝坊ったって7時だぞ」
「立派な寝坊だよ」
「今日くらいいいだろ。
体のために、無理だけはしたらダメなんだよ」
「……そう、言われちゃうと…」
「他の何をおいても睦が大切だ。
コレ、俺の言葉より家事を優先させて
倒れでもしたら…どうなるかわかってんな?」
脅しでもかけねぇと
どんどん無理しようとする睦への
俺なりの牽制だ。
「……はい」
おとなしく俺の腕に頭を乗せた。
「こうしててやるから、もうちょっと寝ろ」
「ありがとう…」
そう呟いて目を閉じる睦は
やっぱり気怠げで
休ませて正解だと感じていた。
手持ち無沙汰な俺は、
しばらく睦の髪を撫でたり
寝顔を眺めたりしていたが
枕元に本を置いておいたのを思い出し
それをゆっくり読み始めたのだった。