第17章 愛月撤灯
「…うん…」
「お前あったけぇな…」
「ん……天元は、息できるの…?」
ふとそんな事を思う。
だって、私は彼の上に乗っかっている状態だ。
私の言葉に、
彼はお試しのように呼吸を繰り返した。
「…できるな。
つぅかお前なんか乗ってねぇのと同じだわ」
なんてこと…。
「そう、なの…?」
「安心して、このまま眠れ」
優しく頭を撫でられて
「このままでい、の…?」
もう半分、夢の中…
「いいよ…くっついてようぜ…」
「…ん…」
彼の香りに包まれて、私は瞼を閉じた。
目を覚ますと、雨の音。
雨か…
雨でも、サンポしてぇとか言うのかな…
そんな事を思いながら、
隣で眠る睦を見下ろす。
俺の胸の上で眠りに落ちたはずの睦は
寝返りの拍子にでも下りたのだろう、
今は隣で、ぴたりと寄り添って眠っていた。
可愛い睦…
時間も忘れて眺めていると、
ぴくりと眉を動かして
うーんと身じろぎをし出す。
うっすらと開いた目に俺を捉え
にこっと笑って見せた。
「…可愛い」
まるでおはようの挨拶のように
当たり前の如くアホな台詞が口をつく。
寝ぼけ眼を瞬かせ
頭の上に『?』を並べる睦は
間違いなく可愛いだろう?
ならもうそれでいいはずだ。
「おはよ」
もう一度にこっと笑って、
睦は俺の腕にしがみつく。
「おはよう、よく寝てたな」
いいこいいこ。
「うん…一緒だと、よく寝られるの」
「そうか…じゃずっと一緒にいよ」
小さな体をぎゅうっと抱きこんだ。
「ふふ…嬉しい…」
睦もゆるく抱きしめ返し…
ふと顔を上げる。
「…雨?」
「あぁ…降ってるな」
「…そっか。だからかな…すごく怠い…」
「怠い?そりゃあ良くねぇな」
睦を布団でくるみ、
その上から抱きしめる。
「寒くねぇか?」
「うん、大丈夫」
「喉は?」
「…痛くない」
「頭」
「痛くない」
「どっかおかしいとこはねぇのか?」
「ないよ、ありがとう」
穏やかに笑うその表情は
体調が悪いと言う程では無さそうだ。