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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第17章 愛月撤灯












『さ、今のメシのお礼に、
何かしてやれる事はねぇか?』



あれが、
私がしてあげたことに対して
初めて見返りが発生した時。
おじちゃんたちは別にして。だって家族だから。

私はできて当たり前だった。
『お礼』だなんて、とんでもない話だった。

それをあの子は…幼い頃の天元は
当然のように、あんな事を言ってのけた。

そしてその言葉通り、
私の小さな願いを叶えてくれたね。
あの、『してやれる事はないか』と言われた事は
あまりにも衝撃的で、嬉しくて、
きっと一生忘れないと思う。

私がしてあげた事が
認められたという事だから。
私がした事が、実を結んだという事だから。

当たり前じゃなかったって、事だから。

なんだかすごく、救われたんだ。
彼にとっては、何でもない、
ごく自然に口をついた言葉だったんだろうけど…。

あの日から私の中で変わったのだ。
人のためになにかをするのが
劇的に楽しくなった。
自分のした事を認めてもらえるのならと
更にがんばるようになった。

『やらなくちゃいけない』って思ってたのが
『やってあげたい』に変わった。
たったそれだけの事で
私の世界は、ひどく優しくなったんだ。






「なに、考えてる?」

おでこに優しく唇を押し当てて
愛しい人が囁いた。

「…天元のこと」

「俺?…お前もっとこっち来い」

あたたかい腕の奥に私を押し込めて
全身でくるんでくれる。
冷たい空気に触れる箇所がなくなって
なんとも心地いい…

こんな安心感、どれだけ味わってきただろう。
この人に出会ってから、私はずっとこんな調子。

愛されるのって
幸せだなぁ…

目を閉じて、大きく息をついた私を
チラと覗き込み

「…そんな無理させたか?」

心配そうに訊いてくる。

「…そうじゃなくて…
幸せを噛み締めていた所です」

何となく気恥ずかしくなった私は、
彼の胸に隠れながら本音をもらした。

「ほぅ…幸せでしたか」

彼がおどけるものだから、
私の気は少し晴れる。
相変わらず、私の事、よくわかってくれてる。

「はい、とっても…」

「そんなに…よかったかよ」

「…うん。好きな人と
こうしていられるのって、こんなに幸せなんだね」




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