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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第17章 愛月撤灯





「嫌じゃない!でも、その…
近いっていうか、…照れて…」

言い淀む私を見て、
一転、天元は嬉しそうに目を細めた。

「嫌じゃねぇなら問題ねぇ。
でもよ…」

…でも…?

「近いの、まだ慣れねぇの…?」

…天元、それはまずいよ。
その笑顔は、反則。
恥も照れもなくなっちゃうでしょ?
そういうの飛び越えて、愛しいだけになってしまう。
それでも私は、理性を総動員させて

「…外、なんだよ」

それっぽい事を口にした。

「…誰もいねぇ」

「いや、誰かがいるいないじゃ、なくて…」

「空も川の流れも木漏れ日も、
お前も、きれいだな…」

「…え?」

「ほら、木漏れ日…上、見てみ?」

「上…」

彼から目をそらし、
言われた通り顔を上に向ける。
枝や葉の間をくぐり抜けた光が
私の目を刺激した。

ゆらゆらと風に揺れる光は
彼の言う通り、とてもきれいだった。

そうして、
気を奪われていた私を
突然襲う口づけ。

最初こそ慌てて抵抗していたものの、
彼の優しい口づけに溶かされてしまって
ここがどこかなんて事
どうでもよくなってしまう。

木漏れ日がきれい、だなんて
顔を上げさせる為の手段…?

「…睦よぉ、お前可愛いなぁ。
俺とこうしてんの、好き?」

薄く唇を触れ合わせたまま
震えが来るほど優しく囁いた。

「…だいすき。天元と、くっついて、る…っ」

言い終わる前に唇を奪われて、
さっきよりもほんの少しだけ
情熱的に求められる。

きれいな瑠璃色の着物を握り込むと
力強い腕で全身を抱き寄せられた。

このままじゃ、溺れてしまう…

そんな事を思った瞬間、
ちりん
と、澄んだ音。
鈴の音だ。

「…っ!」

誰もいないと思って、
こんな事をしていた事をひどく後悔した。

天元を思い切り押しやって
唇を離してもらう。

「……」

不満そうな天元を尻目に
辺りを見渡す私の目に飛び込んだものは…

「にゃあ」

猫だった。
紅い縮緬の首輪についた金の鈴を揺らし、
私たちの方を見ていた。

「また猫かよ…」

天元はげんなりしている。









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