第17章 愛月撤灯
そう言って私を見下ろした天元が
不意に口をつぐむ。
「……」
きっと、バレたのだ。
だから
「…もっと遠回りしたい」
自分から正直に言った。
さすがに天元は、ぷっと吹き出して
「お前どんだけ好きなんだよ」
おもしろそうに私の頭を撫でる。
「えぇっ!だって、こんなに素敵なんだもん。
ずっと一緒に歩いていたいよ」
「……いや、」
珍しく頬をほんのり染めて、
「俺が言ったのはサンポの事だ」
「………」
え?
『どんだけサンポが好きなんだよ』と、
天元は言ったらしい。
それを
『どんだけ俺のこと好きなんだよ』と
とってしまったのだ…
「やっ、ややこしい言い方しないでよ!」
つないだ手を離そうと
ぶんぶん振り回す私と、
「何だよ、勝手に勘違いしたのお前だろ!」
離されまいとして
強く握り込む天元。
2人して真っ赤になって吠える。
ただ、ここは往来だ。
…目立つ。
「…やめよう。行くぞ」
「…はい」
人目が突き刺さり、
慌ててその場を後にした。
逃げるように彷徨っていると、
少し前にホタルをみた川原に出た。
民家から離れたその場所は人気も無く
ただ鳥の囀りが聞こえるだけ。
「また、下りてみるか?」
「うん。あの木の所まで行きたい」
川の流れの近くに立つ
大きな木を指差した。
「あぁ、日陰になっててよさそうだ」
天元も笑って快諾してくれる。
護岸を下りて木の根元に座り込む。
天元は当然のように私を自分の膝に座らせて
何事もないみたいな顔で
川の流れを眺め始めた。
あのホタルの時もそうだったけど…
これ、結構緊張する。
何でもないフリなんてうまく出来ない。
この間は夜で、辺りは暗かったし
熱い頬を見られずに済んだのだ。
「…あの、天元…」
「ん?」
「私、地面に座っても大丈夫だよ?」
遠回しに拒否するも、
「大丈夫じゃねぇよ。
着物が汚れたらどうする」
「大丈夫。ハンカチあるし」
私が食い下がると
少し悲しげに眉を下げ、
「コレだとなんか嫌なのか…?」
同じく悲しげに問われた。
あぁ、そんな悲しそうにされちゃうと…