第1章 嚆矢濫觴
再び深まった口づけに気を取られていると、
頬を撫でている手が、
首筋を通って、
肩を撫で下ろしながら
器用に着物をはだけさせた。
徐々に下りていく口づけ。
大きくてあたたかい手が、
私の胸の膨らみに触れた。
自分の素肌を他人に晒す事なんて初めてで、
「…んっ…やだ…」
不安に涙を溢れさせる私に、
「睦、睦…可愛い…」
優しく囁いてくれる。
「好き、だ。睦…」
宇髄さんは剥き出しになった
私の乳房の頂きを口に含み
舌で転がすように愛撫してくる。
「やっ…あ!…あぁ…っ」
私は恐怖ではなく、
不安でもなく、初めての快感に震える。
宇髄さんの手が、
胸を大きく包み込み、
もう一方の胸の飾りを舌先で潰すように押し込まれ、
「…っ…あんっ!あ…っ」
きゅっと吸い上げられると
私は胸を突き出すようによがってしまう。
「睦、マジで可愛い」
そう言って私から離れた宇髄さんは、
ちゅっと音を立てて
口唇に口づけを落とすと
はだけていた着物を直してくれた。
大人の、
ひどく甘い夢から
ぱちりと目覚めた気分だ。
「……終わり?」
私が呆気にとられていると、
「ん?ああ、今日は終わり。
だって、お前の嫌な事は
しねぇ約束だ」
「……」
私が宇髄さんをただ見つめていると、
「…最後までしたかった?」
真面目にそう訊かれ、
私はぶんぶんと、大きく首を横に振った。
宇髄さんはぷっと吹き出すと、
「そんな全力で拒否されんのも
つれぇもんがあるな」
と言った。
「あ、ごめんなさい。そうじゃなくて…」
「わかってるよ。
これでも睦の事、
本気で大切にしてんだ。
お前がいいと思えるまで、
ちゃんと待つからな」
私の隣にごろんと寝転んで、にっこりと笑う。
そんな顔を見せられたら、
もうたまらない。
「私、宇髄さんのこと、好きです」
彼の胸のあたりに頬を寄せて
腰に抱きついた。
「おー…今これ、ヤベェな……」
「…え?」
顔を上げようとすると、
慌てた様子で、私の頭を自分の胸に押し付けて、
「俺も睦が好きだ」
と、言ってくれた。