第16章 実弥さんと一緒
「俺が側にいる…。
お前を、俺のにしてもいいか?」
「…実弥さんの…?」
「あァ…俺のものに、なれ…」
「……」
ただ涙を流す睦。
それでも返事をしねぇこいつに
追い討ちをかけるように
「睦を、俺にくれ」
優しく囁いてみる。
もう、今日みてぇなのは耐えられねぇ。
お前がどっか行っちまうんじゃねぇかと
気が気じゃなかった。
どっか、確証がねぇと、
…つながりを感じねぇと、
俺はどうにかなっちまいそうだった。
「頼むから…」
そう口にした途端、
睦から、唇を寄せてくる。
そうっと確かめるように触れて、
ゆっくり離れて…離れたく、ねぇな…
そう思って俺は、
くっと顎を上げて睦の唇を追った。
驚いた睦は一瞬止まり、
それでも、愛しげに戻って来てくれる。
言葉で返事を聞く事なんかより、
よっぽど伝わる気持ち。
許しを得た俺は、
首元から手を差し入れて
ゆっくりと着物の合わせを開いて行く。
身を硬くする睦のために
ゆっくり時間をかけて、
限りない愛を
注ぎ込んで行った。
ぎゅっと、
抱きしめられる感覚で目が覚めた。
瞼が重い。
体も、重い。
何度か目を瞬かせ辺りを見渡す。
見慣れない部屋。
真っ白い布団からは、
ほのかに実弥さんの香り。
あぁ、実弥さんの部屋なんだ…。
背中から抱きしめられている私は
少しだけ後ろを見やる。
実弥さんは、まだ眠っているよう。
昨夜そのまま寝入ってしまった私たちは
何も身につけていない。
私の背中と、彼の胸がぴったりくっついていて
…心地いいけれど、恥ずかしい…
彼が目を覚まさないうちに
何か身につけたいけれど、
畳の上に散らばった着物を取るには
この、
私に巻き付いている長い腕を
どかさなくてはならない。
…そんな事をしたら、
彼は間違いなく目を覚ますだろう。
どうしたものか考えあぐねていると
「…睦。起きたのか…」
掠れた声を出し
軽く私を引き寄せる実弥さん。
「…!」
「…睦?」
「あ…お、はよ、ございます…」
「おー…」
眠たそうな実弥さん。
なんだかちょっと可愛い。