第16章 実弥さんと一緒
睦の手を取って
新しい部屋へと案内する。
「ここ。お前の部屋な。
隣が俺のだから、何かあればすぐに来い」
箪笥や卓など、生活に必要なものは
適当に入れておいた。
あとは自分の好きなように
物をしまうだけだ。
「ありがとうございます。嬉しいな…」
睦が目を赤くする。
…少し、不安か?
俺は話をそらすように
「さ、先に片付けちまうか?それともメシか」
時計の針は、ちょうど12時を指している。
はっと気づいた睦は
目を丸くして
「ごはん作ります!
実弥さん、お腹すいてますよね?」
俺のことなんかいいわ。
お前は今、自分の事でいっぱいだろうが…。
だが、
「…ありがとな」
優しい睦に、
微笑み甘えてしまう俺。
そして、
「何が作れるかなぁ…」
と、俺を甘やかすお前。
ありがとう。
大好きだ。
午後はあっという間に過ぎた。
先に夕飯の買い物に2人で行き、
帰ってから、睦は部屋の片付け。
案外、時間がかかっていたので
夕飯は軽く俺が作ると、
睦は驚いて、その後少し拗ねた。
自分が作りたかったと言った。
そう言わずに食えと勧めると
目をキラキラ輝かせて
おいしい、と完食してくれる。
メシは、元気の素だ。
2人、時間差の風呂を済ませると、
後はもう寝るだけだ。
茶の間
「今日は疲れただろうからゆっくり休めよ」
「はい。今日はありがとうございました!
おやすみなさい」
睦がにっこりと笑う。
「あァ」
俺が自室へ向かうと
「……」
1人茶の間から動こうとしない。
足を止め振り返ると、
「あ、おやすみなさい!」
睦は我に返ったように
急いで部屋へと向かう。
それに倣って、俺も自室の襖を開けた。
開けたまま、隣の部屋の様子を窺う。
「……」
——はーぁ…。
自室の襖を閉め、
睦の部屋の襖をそっと開ける。
…こいつは。
どうしてこんなに。
静かに入室し、音を立てないように
近づいた。
睦の横たわる布団にもぐり込むと
涙に濡れた両目が
驚いたように見開かれる。
「実弥、さ…」
睦を安心させるように笑ってやり、
震える体を身ぐるみ抱きしめた。