第16章 実弥さんと一緒
たくさん泣いた気がする。
いつの間にか、自分の布団で寝ていて…
あれ?
薄暗い部屋、
私の、部屋…。
どうやってここまで来たのかわからない。
玄関で、実弥さんに思い切り甘えたのは覚えてる。
「泣き疲れてなァ、立ったまま寝ちまったんだよ。
器用だなァお前は。
悪ィとは思ったが勝手に上がらせてもらったぜ」
質問もしていないのに急に答えをもらい、
驚いて声のした方をみると
少し眠たそうな実弥さんが、
畳に胡座をかいて、こちらを見ていた。
私たちの手は、しっかりとつながれている。
「…おはようございます。
あの…一緒にいてくれて、ありがとうございました」
「おぅ。少しは元気になったかよ」
優しく私を覗き込んだ。
「はい!泣くってすごいですね。
すごく楽になりました。
母の事は心配だけど…。ちゃんと
向き合えるような気がします。
実弥さんのおかげです。ありがとうございます」
私がにこにこ顔でいうと
「そいつぁよかった。
睦は笑ってんのが一番だ」
実弥さんもにこにこ顔になる。
昨日の闇が涙に溶けて
流れ出てしまったような気分だった。
実弥さんが私の涙を受け止めてくれたから…
そばにいてくれたから
私は安心して泣く事ができた。
「実弥さんがいてくれて良かった」
心からそう思った。
実弥さんが隣にいてくれると
自分が安定するのを感じる。
本当に、安心する。
「朝っぱらから、んなこと言って。
惑わすんじゃねぇよ」
え、惑わせる…?
「とにかく」
実弥さんが頬をほんのり冷めて咳払いをする。
「今日はゆっくり休め。何もすんな」
「え?」
「泣いてスッキリしたからって、
昨日の今日じゃ家事にも身が入らねぇだろ。
あぁ、病院行って、
母ちゃんのそばにいる事なら許してやるぜ」
私は、とぼけた顔をしていたと思う。
私より、私の事わかってくれるのね。
ズルいな実弥さん。
そこまでしてもらえる程の人間じゃないよ。
私、嬉しすぎて、もう申し訳ないな。
「…実弥さん。ありがとう」
私は、彼に抱きついて、
「いつも、してもらうばっかりでごめんなさい」