第15章 秋祭り【実弥】
正規の道を逸れた私たち。
まっすぐ帰るのは、何となく淋しかった私の為に
彼は思いを汲んでくれた。
でも川辺の道へと続く暗い道に差し掛かった途端
私は急に抱きしめられた。
突然の事で私は大いに慌て、
加えて焦ってしまって…
「さっきからなァ…」
ゆっくりと、上をむかされて
熱を湛えた瞳とぶつかった。
切羽詰まったような声。
何だか、ちょっと色っぽい…
「お前…」
言いながら近づく唇に、
動くことが出来なかった…。
あれ、…
実弥さん、
こんな所でこんな事する人じゃないのに…
そんな事を冷静に考えている自分がいた。
「え…?」
どんどん近づいてくる彼を何故か止められない。
「あの、待ってくださ…っ」
荷物を抱えた手では、
うまく彼を、押し返せない…
確かに人気はないし、
それに真っ暗だ。
だけど…ここは外。
合わさる唇は大好きな実弥さんのもので
喜びに震えるけれど
どうにも落ち着かない…
「…ん、…や、」
小さな抵抗に、実弥さんは少し唇を離した。
「…お前が、可愛いのが悪ィ」
「なん…っ」
背中に腕を回され力を込めて引き寄せられる。
すると私の方から唇を押し付ける形になって
焦った私は、抱えていた荷物を
落としそうになった。
でも、好きな人に求められて
幸せを感じてしまった私は
ここがどこだったかなんて
すぐにどうでもよくなってくる。
小さな口づけを繰り返していた実弥さんは
私がおとなしくしているのがわかると
少しずつ、オトナな口づけに変えていった。
息苦しさに声を上げると、
ちゅ、と唇を離し、
スリっと額をすり合わせる。
「…遠回りしてる余裕、ねぇぞ」
熱い視線にとらわれて、
「ん…私、も…」
照れながらも
私は正直に胸の内をさらす。
「…それが、可愛いんだっつの」
結い上げた髪が崩れないよう
優しく頭を撫でてくれた。
そんな事を言われて……どうしよう。
「…なぁ、近道、してもいいか?」
「近道…なんて、あるの…?」
「ある…」
「じゃあ、…そうする…」
少し俯いた私を阻止するためか、
届かなくなる寸前にまた口づけをされ
そのままくいっと顎を持ち上げられる。