第15章 秋祭り【実弥】
「うん…。見つけてくれて、
ありがとうございます」
どうしても耐えられず
彼の腰にゆるく抱きついてしまう。
私の行動に驚いた実弥さんは
「…怖い目、あわなかったか?」
心配そうに私を覗き込んだ。
…いつも通りの優しい声に安心した。
「大丈夫です…。あ、」
怖くはなかったけれど…。
「…何だァ」
急に鋭くなった声に
少しビクつきながら
「スリに…」
「はァ⁉︎」
「合ったけど大丈夫でした」
「…何だそりゃ。どういう事だァ」
私はコトの顛末を話して聞かせた。
「誰だか知ってますか?
なんだか親しげな感じでしたけど」
「あぁ、…親しくは、ねぇと思うがな」
あれ?違うのか。
「私、お礼言うの忘れちゃいました…。
助けて頂いたのに失礼な事を…」
「気にすんな。俺が言っとくから」
「ありがとうございます。
よろしくお願いします!」
にっこりと笑うと、
「…なんかお前、ご機嫌だなァ?」
実弥さんも嬉しそうに笑った。
私、この人の笑顔、大好きだ。
「はい、実弥さんに会えたから」
もう少しだけ強く彼に抱きつくと、
「お前こんなとこでくっつくな!」
照れながら怒る。
「…えー、実弥さんからくっついて来たくせに…」
腑に落ちないな。
「…るせぇや。
あん時ゃお前見つけて安心したんだよ。
だいたい俺からすんのとお前からすんのじゃ
全然違うんだっつうの…」
私にはよく聞こえないくらいの声量で
ぶつぶつ言いながら
私の手を取り歩き出した。
「ほら、次はどこ行くんだよ」
「飴細工。そこなんです」
「おぉ、近ぇな」
くるりと向きを変え、そこへと行ってくれる。
「何作ってもらうんだ?」
「犬」
「…ウチにいるだろうがァ」
「食べられないじゃないですか」
「当たり前ェだろうアホか」
「実弥さんも作ってもらう?カブトムシ」
実弥さんはさすがに吹き出して
「いらねぇなァ」
私の手をぐいっと引き寄せた。
睦はでっかいりんご飴と、べっこう飴を食い、
飴細工は可愛いからと食わずに手に持って
輪投げとくじと射的の景品、
最初から言っていた金魚を抱えて俺らは歩いた。