第15章 秋祭り【実弥】
「わかったから、ちっと落ち着けやァ」
言いながら額に口づけると
風船の空気が抜けていくように
しゅるしゅると大人しくなった。
そんな事で
頬を真っ赤にしている睦が可愛くて
つい唇まで奪ってしまうのだった。
その後、寝る瞬間までずっと、浮かれっぱなし。
でもやっぱりぎゅっと抱きしめて寝床に入ると
真っ赤になって大人しくなり、
いつのまにか2人して、眠りに落ちていた。
朝からそわそわうろうろ…
浮かれてんのはわかっちゃいるが
いい加減、目の前をうろつかれんのも
目障りになってきた…
「なァおい、…ちょっとここ来て座れよ」
俺に言われて気が付いたのか、
少し頬を染めた睦は
テーブルを挟んだ、俺の向かいに座った。
「ガキじゃあるまいし、落ち着けやァ」
「…はぁい」
小さくなって正座をする姿に
少し可笑しくなる。
だって、可愛いだろ。
こうなってるのは
俺と祭りに行けるってのが理由なんだから。
それにしても
こいつの落ち着きがねぇと
俺も忙しない気持ちになってくる。
「行く前から疲れちまうだろ」
「疲れないですよ!
めちゃくちゃ元気いっぱいですもん!」
「…悪ィが、俺がだ」
「あっ……ごめんなさい」
意味を理解して更に身を縮こめる。
「くっ…冗談だ。楽しみだもんなァ?」
「はい!早く夜にならないかなぁ」
そりゃあもう満面の笑みで答える睦。
「俺に出来るモンなら早めてやりてぇがなァ…」
つい呟いた一言に、
睦が顔いっぱいに喜びを咲かせた。
「…実弥さん大好き」
同じく、つい呟いた睦の一言…
「お前は…素直すぎだなァ」
感心する。
恥ずかしげもなくそんな事が言えるもんだ。
いや、感心してないで、
見習うべきなのか。
素直で可愛い睦に、
ゴホウビでもやろうかね…
「ちょっと早いが、準備して出るかァ…」
「え…ッ?でもまだ随分はやいんじゃ…」
「あァ。でも散歩がてら遠回りしてきゃ
ちょうどよくなんだろ」
睦は目をキラッキラ輝かせ
両手を口元に添えた。