第15章 秋祭り【実弥】
「明日なぁ、
隣町のでっかい神社で、秋祭りやるってよ」
この間、3人で寄り合った時に
事情を知った世話焼きの大男が言った。
何でもないふうに言うが、
きっと俺のために調査しまくったに違いない。
3人の優秀な部下とともに。
それを追求すると、
「俺が、行きてぇのー。可愛い嫁と。
ついでにお前にも教えてやっただけだ」
なんて、
見えすいたウソをつきやがる。
まぁ俺のため、と思えばありがてぇ話か。
素直に礼を告げると
満足そうに微笑んだ。
今回ばかりは、感謝せざるを得ない。
「連れてってくれるんですか⁉︎」
焦りを抑えて、なんでもないふうを装ったまま
愛しい女に伝えると
予想通り、両手放しで喜びの声を上げた。
一度裏切られているため
喜びもひとしお…
「あァ、せっかく教えてもらったし…
お前が行きてぇのなら行けばいいんじゃねぇの」
「行きたいです!
嬉しい、こんなに早く叶うなんて…!」
睦は持っていた包丁を放り出し
斜め後ろに立っていた俺に抱きついた。
「そうかよ…」
「うぅ、嬉しい」
「お前が喜ぶなら、良かった」
頭に手を置いて撫でてやると
更に嬉しそうにして
「お祭り、いつですか?」
ご機嫌全開で見上げてくる。
「明日」
睦は目をまん丸に開き、
「明日⁉︎」
大声を上げた。
「いい反応だなァ」
あんまり素直な反応に
つい、笑ってしまった。
頬を上気させ興奮する睦は
「どうしよう、楽しみで眠れなくなっちゃう!」
子どもみたいな事を言う。
「…お前そんなに好きなんか、祭り」
「はい!大好きです!」
にっこり笑って、
ちょっと目をそらしたと思うと、
「実弥さんと一緒だから、余計…」
照れたように笑った。
…それは、クるものがあるな…
「んー…そうかよ」
上がる体温をごまかすように
睦を抱きしめた。
「はい!あ、浴衣出さなきゃ!」
「あァ」
「実弥さんのも!」
「おぉ」
「髪どうしたらいいかな!」
「んん?」
「下駄下駄!外の物置にあるやつ!」
……