第14章 可愛い邪魔者
「ん…もっと」
俺も甘える。
すると睦は
ふっと破顔して、俺に応えてくれた。
俺の言った通りにする睦も
奔放にする睦も可愛い。
ゆっくりと味わうように繰り返される口づけ。
これ以上俺に『もっと』と言わせない為なのか
長く、しつこいものだった。
俺にとっては何の問題もない行為。
ずっとしていられる。
ただ、相変わらずもどかしい。
いつまで経っても、軽く触れるだけのそれは、
俺の奥に灯った火を燻らせる。
…でも、たまにはいいか。
こうして、触れているだけでも
互いを確認できて満たされる。
こいつが無事でそばにいれば、
それでいい。
「睦」
ふと唇が離れた隙に名を呼ぶ。
静かに瞼を開いた睦は、
ツと動きを止めて、間近で俺の目を見つめた。
呼んだくせに、何も言わない俺を、
不思議そうに待っている。
そんな睦の髪を撫で、
するりと頭の後ろに添えると
角度をつけて俺から口づけた。
「…っ」
噛み付くようなそれを受け止め
睦も俺の髪に指を差し入れて甘える。
今日は、逃げない気らしい。
急に深まった口づけに息を上げ、
目を閉じて感じる睦が愛おしかった。
「天元…好き…だい…すき…」
合間を見つけては、蜜語を口にする。
「…充分、伝わってる…」
あんまり必死に言葉を紡ぐから、
さっきの事を気にしているのかと思い
もうわかってる、と
伝えたつもりが
「もっと、知って…?」
上目遣いでそんな事を言うから
それなら睦の好きにすればいいと
俺は何も口にせず、ただ行為に及んだ。
唇だけでなく、瞼や頬、顎のつけ根から首筋まで、
届く範囲すべてに唇を滑らせる。
くすぐったそうに身を捩りながらも
逃げる事なく俺の頭を優しく抱きしめる睦。
あのチビっこのおかげで、
こんなにいい目を見られるとは思いもしなかった…
自分でも驚くほど、
甘い言葉が口をつく。
しつこく口づけを落とす天元にすら
抵抗する気も起きない。
何となく、はしたないような気がするけれど
彼が喜んでいるように見えて、
それならいいのかもしれないと
都合よく捉えてしまっていた。