第14章 可愛い邪魔者
「…睦、もう…終わりか…?」
おでこをくっつけて、彼が囁く。
もっと言えと強請られているように聞こえて、
私は、自分が喜んでいる事に気がついた。
「…もっと、言ってほし…?」
わざとそんな言い方をする。
天元は、私の瞼に口づけをして
「…ずっと、聞きてぇ…。
その、可愛い声…そばに、いるって…」
不安そうに言葉をつないだ。
「そばに…?」
どういう、事だろう…。
「あぁ…お前が、そばにいるって…
感じたいから…」
…さっき、私があんな無茶な事したから…
「…だいすきだから、…ここにいる…」
ぎゅうっと、彼の頭を抱きしめて
自分の存在を植え付ける。
「ん…、」
私の言葉を遮るように
再び口づけが降りて来て
優しく唇を塞いでしまう。
もっと言え、なんて、言っていたくせに…
「…睦、…今日だけ、許してくれ」
何を、
と訊く前に、
強い腕に絡め取られ、耳を甘噛みされた。
「…っ!」
突然の刺激に声を上げるのも間に合わない。
私は、もしかしたらあの時、
子猫を抱えたまま落下していたかもしれない。
自分でも、それを覚悟した。
彼の留守のうちに、
1人木の下で意識を失っていたのかもしれない。
そして帰ってきた彼は
そんな私を見つけて絶望するのだ。
それを思うとゾッとする。
私でもそうなのだから、
天元はもう地獄だろうと思う。
いかに、恐怖を感じていたかがうかがえる。
あの可愛いだけの子猫を
疎ましく思う気持ちもわかる気がする。
確かに、
あの子がいなければ
私はあんな木の上になんか行かなかった。
今は、後悔しかない。
あんなこと、本当にしなければよかった。
この人がこんなになってしまうなんて…
浅はかだった自分が恨めしい。
だから、
「…っ天、元…も、勝手は、しないから…」
私は伝えるしかない。
「だいすき…」
深い口づけをやめない彼に
必死に想いをつむぐ。