第14章 可愛い邪魔者
睦は言葉を失って、
「…よしよし、えらかったね…?」
俺の頭を撫でた。
「…おちょくってんのかお前」
「だって、褒めて欲しいって…」
「ワケもわかってねぇのに褒めていらんわ」
「だって…子猫の事でしょう?
俺以外の男、なんて言われても…
ピンと来ないっていうか…」
ホントにわかっていないような目。
「俺の、お前への愛がわからねぇの」
大袈裟に、
縋るように擦り寄ってみる。
「…だってただの猫だもん」
至って冷静に睦は言った。
「睦…」
「私にとってのそういうの、天元だけだもん」
「そういうの…、って?」
「え、だから…。そういう…の」
うまい言葉が見つからないのか
同じ言葉を繰り返す。
「……」
俺が黙り込んだのを見て、
少し慌てる所が、ただ可愛い。
「えと…うーんと…好きの対象というか、
私が、大切にしたいと思う…?
んー…?…大好きで、愛しくて、
誰にも渡したくないくらい大切で
ぎゅーってしたくて離れたくない…」
いろんな言葉を並べるも、
どれも違っているようで
しきりに首を捻っている。
俺を愛する色々な言葉が飛び出してくるので
ただ黙って聞いていた。
「…うーん違う…。好き…愛してる…?
大好きで、幸せ…触れたくて、離れたくない…?」
おーおー、言ってくれるなぁ。
もう少し聞いていたかったが、
とうとう睦は諦めたようで
力いっぱい俺に抱きついてきた。
「…どうした」
もうオワリか。
「しっくり来る言葉が見つからなかった…」
「…だからこうしてんの?」
睦はうん、と頷いた。
「言葉より、伝わる?」
そろりと見上げてくる睦に、
「…んー、ちっと弱ぇかなぁ」
少し意地悪く言ってみる。
「じゃあ、」
俺の胸元から伸び上がった睦は
両手で頬を包み込んで目を合わせると
少し首を傾けてゆっくりと口づけた。
食むようなそれは、
睦の言う通り、
言葉なんかよりもよっぽど
想いが伝わってくるような気がした。
「伝わった?」
触れ合わせたままの唇から
甘えた声がする。