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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第14章 可愛い邪魔者





私はそろりと
体の向きを変える。
だけど
幹から手を離せない…。
だって今度は、
細くなっていく枝に向かって行かなければ
ならないのだ。

行きは良い良い帰りは怖い…。
あぁ、ほんとにそんな状況。

子猫は相変わらず
大きな口を開けて鳴いている。

怖がってる場合じゃないよ睦!
この子を、
無事お母さんの元に返してあげなくちゃ…

私は自分を奮い立たせ
一歩踏み出そうとした。

その瞬間、
一陣の風が私を思い切り吹き上げた。
急に吹き付けた風のせいで
私の足は枝から浮いて
大きく後ろに傾いた。

あ、ごめん天元
私落っこちちゃうかも…

私は無意識に子猫を強く抱きしめて、
落ちる準備をした。

………あれ?


なのに、浮遊感も、衝撃もやって来ない。
それどころか、暖かいものに包まれて…

「なにやってんだお前は」

低く唸るような声。
怒ってる。
なのに、大好きな優しい香りに包まれて
私はひどくときめいていた。

「ごめんなさい…」

「…生きた心地がしねぇわ」

ため息混じりの言葉。
本気で心配させてしまった。

「ごめんなさい」

「頼むからこんな事すんなよ…」

最初の勢いはどこへやら。
私の無事を実感するほどに
しぼんでいくようだった。

私と天元の間には、
未だににゃあにゃあと鳴く子猫。

「……こいつ助けたの?」

太い枝の上、
私の事をしっかりと抱きとめてくれた天元は
少しだけ身を引いて
その猫を見下ろした。

「下りられなくなってたみたいで…
助けてあげなくちゃって」

「お前な、「うん!そうだよね」

言いかけた天元を遮った。

「ごめんなさい。もうしません…」

そう、天元の帰りを待てばよかったんだ。
すぐ帰ってくる事はわかっていたし、
こんなのこの人なら朝飯前なのだから。

すぐ…

「…早かったね、帰り」

「当たり前ェだろ。
お前が早く帰ってこいなんて可愛いこと言うから
最速で帰ったのに」

ジロリと睨まれ、
私は返す言葉がみつからない。

「ごめんってば…」

「あーもう…。頼むぜ睦。
お前の為に帰ってきたのに
こんなとこから落っこちてるの見たら
俺ショック死すんぞ」

「でもそのおかげで私、助かった。
ありがと」





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