第14章 可愛い邪魔者
大きな荷物の間をすり抜けて
ぶつかる勢いで窓に手をついた。
思った通り、ここまで枝が伸びている。
小さな窓だけど出られない事はなさそうだ。
カギを開け、窓をガラリと開く。
その辺にある大きめの箱を足がかりにして
窓枠につかまった。
足から出るのってちょっと怖い…
滑り落ちたりしないように、
ゆっくりと窓枠に腰掛けて
太い枝に足を伸ばす。
長く伸びたこの枝は
屋敷の壁に突き刺さってしまいそうだったので
わざわざ庭師さんを呼んで
切ってもらった所だった。
枝先ではないので太いのだ。
故に、私も乗れる。
幸い子猫はこの枝の根元にうずくまっている。
私は心細そうに鳴き続けるその子を
早く助けたくて
怖い、なんていう気持ちも忘れて、
太いけれど、歩くには細い枝に足を下ろした。
幹に近づくほど
がっしりと太くなっていく枝は
とても心強い。
おかげで難なく、子猫の元へとたどり着けた。
「猫ちゃん、迷子なの?」
幹に片手をついて、少し上体をかがめると、
空いたもう一方の手で
子猫を掬い上げようとする……のに、
ツメが引っかかってままならない。
「もう大丈夫だよー」
手全体で子猫の体を持ち上げて
人差し指で猫の前足を弾き
引っかかったツメをなんとか取った。
案外簡単に取れてくれて助かった…
「あぁ、よかったね。
どうしてこんな所に1人でいるの?」
バランスが崩れないように幹にもたれた。
子猫を胸に抱き寄せ、頬ずりをする。
ふわふわで、可愛い…。
あったかいな…。
不安そうに、
にゃあにゃあと泣き続けるその子を見て
「あ、お母さんを探してるのか…」
そう思った私は、
腕の中の子猫に
「1人で遊びにきちゃったの?
しかも下りられないような木に登るなんて…
きっとお母さんも心配して…」
そんな事を言いながら、
私はやってはいけない事をした。
…下を見てしまったのだ。
子猫を助けるのに必死だった私は
そんな事すっかり忘れていた。
あぁ、コレ、ミイラ取りがミイラになるやつ?
…ちょっと違う?
あぁ、そんな事どうでもいいの。
早く、あの窓までもどらなくちゃ!