第13章 輪廻
やっぱり俺の脳みそ煮えてら。
「お前メシなんか作れんの?」
「失礼な。包丁も火も使えます」
「ヘェ。お前のメシ楽しみだな。
これから作ってくれんだろ?俺のために」
「…これから?」
「あぁ…あれ?違うのか?」
「…違わない…ん?どういう事?」
あぁ、こいつわかってねぇのか…。
俺は胸元に埋まっている睦を、
仰向けになった自分の胸の上に引き上げる。
睦は少し驚いていたが、
すぐに俺の胸に頬を預けた。
「お前ここで暮らすんだぞ」
「んー?……え?…そ、なの?」
ぱっと頬を浮かせた。
他人事のような返事。
でも、喜んでいるような…
それでいて信じられないような。
「でなきゃお前、どこで暮らすんだよ?」
おもしれぇ女だなぁ。
「うん…そう、なんだけど。
住むとこ一緒に探すとか、
そんな感じだと思ってた…」
ちょっと惚けてから、
「ほんとに、置いてくれるの…?」
「お前がいいなら」
さっきの睦の言葉を模して答えると
泣きそうになっていた睦は
ぷっと吹き出した。
そうやって、笑ってるのがいい。
「ありがと…。なんだか
幸せがいっぺんに来たみたいで怖いなぁ…」
俺の胸の上に両手を重ね、そこに顎を乗せて
夢見心地でため息をついた。
「いいんじゃねぇの…?
今までがんばってきた見返りだと思えば
まだまだ足りねぇよ」
俺は睦の頭から頬にかけて撫で下ろす。
目を開き、嬉しそうにふふふと笑った。
「今ね、すっごく恋してるからね、
ふわふわだよ?」
幸せそうな顔。
「そうか…可愛いなぁ…
俺に恋しちゃったのか…?」
「ふふ、そう。よくわかったね」
くすくす笑う睦。
「あぁ、そうだろ。偶然だなぁ。ガラにもなく
俺もお前に恋しちゃってるからよ」
「あら、それは嬉しい」
わざとらしく答え、また目を閉じる。
「こんな気持ちがあるんだねぇ…」
しみじみと言う。
だから俺も
「ほんとだなぁ…。
睦が、教えてくれたんだぞ」
しみじみ言った。
「…私に教えてくれたのは天元だよ?」
「もっと、教えてやろうか…?」
「…うん……でも、ちょっと、怖いね…」