第13章 輪廻
「待て待て!」
俺が声を上げると、
ぴたっと口をつぐむ。
「…まったくもう、お前は。
なんて事を平気で言いやがる」
「……?」
訳がわからないというように小首を傾げた。
そうだった。
こいつの基準はちょっとズレてんだった。
「あのなぁ『好き=セックス』は違うと…」
違うと、…思う。
とか、俺が言っていいもんか…?
「…いろいろ、な、複雑だけど…。
お前はわかってるだろうが、愛がなくても
ヤる事はできるだろ。
でも、愛があればそれだけでいいって事が
あると思うぞ」
他でもない俺が、そうだから。
「……そう、なんだ」
「そうなんだよ。実際な、
俺は昨日、お前の心を優先したかった。
きっと、傷ついていただろうから。
睦が俺のとこに来てくれて嬉しかったし、
可愛くて可愛くて…抱きたくて仕方なかったよ。
でも、身体を慰める事より
大切なことがあったんだ」
本音を曝すと、
睦はみるみる目を見開いて
言葉を詰まらせた。
愛する事も、愛される事も知らない睦。
「…さすがに今日は、
もう我慢できなくてこのザマだ」
おどけて言ってやると、
泣き笑いのような表情を見せた。
この愛を以って、こいつに教えてやるんだ。
俺にしか、できないと思うんだ。
思い切り甘やかして、
どれだけ愛してるかを教えてやろう。
「明日も買い物いくか」
「明日も⁉︎でも、明日はお仕事でしょ?」
「サボる」
「うそばっかり。
私も休みじゃないし、どうせムリだよ」
「…お前。そういや仕事してんの?」
「してますとも。生きなくちゃいけないので」
「何やってんだ?」
「お弁当屋さん」
……
「…なんだ、すっげぇしっくりくるな」
何故だろう、睦にぴったり…
そんな風に思うのは。
「…そうかな?
でも確かに、わりと似合ってると思うの。
エプロンとかー…三角巾…?」
「…お前のエプロン姿とか
誰にも見せたくねぇなぁ…」
「あはは、そうなの?
じゃ天元にはいつかハダカエプロンしてあげるね」
ケラケラ笑いながら
とんでもない事を言いやがる…
だが、
「それは…」
「楽しみでしょ」
「…まぁな」