第13章 輪廻
「え…?」
「あ…」
「だいすき…って、言ったか?」
言った、間違いなく。
俺が聞き違えるわけねぇ。
「きっ、聞き流して、ほしいんだけどっ」
言うつもりもなかった心の声がもれた、
そんな所だろう。
そんなん可愛すぎてほっとけねぇし。
「聞き流せると思うか?
やっと好きな女手に入れて浮かれてんだぞ?」
「知らないよっそんなの」
「ちょっと可愛いカオ見せてみな?」
「は…やだやだ!意地悪っ」
「なぁ、…もう、俺だけのモンなんだろ?」
急に声のトーンを落とした俺を
ハッと、見上げた。
その頬をつかまえて、
「こっち向いたな…」
にやっと笑ってしまう。
素直な睦。
「え…ずる、い!」
「睦、俺のモンなんだろ?」
「え…?あの…」
本気なのか、からかわれているのか
はかりかねて睦は戸惑っていた。
それすら可愛くて、
自分の脳みそが溶けているのを思い知る。
「…うん。天元が、いいなら…」
俯きがちに頬を染める
睦の頭に頬ずりをする。
「いいどころの話じゃねぇよお前…
万々歳で大歓迎だわ」
「ふふ…なぁにそれ」
ひとしきり笑って、
睦はふと、顔を上げた。
「…私のこと、そんなに好き?」
不思議そうに問われ、
まだ信じきれていないのかな、
なんて考える。
「あぁ、すっげぇ好き」
「……」
俺の答えを聞いて、何やら思案顔…。
「…なんか、不満か…?」
「そうじゃなくて…。
なんで、昨日じゃなくて今日だったの?」
……昨日じゃなく…?
「悪ィ、何の事だ?」
俺が首を捻ると、
「なんで今日は抱いてくれたの?」
はっきりとそんな事を言う。
「…そんなん訊かれても…」
どんな答えを期待してんだ。
「だって、昨日は誘惑しても乗らなかったのに」
やっぱりそうだったのね。
「不自然にならないように誘ったからかなぁ?
もっとあからさまに誘惑してたら
乗ってくれた?」
「お前なぁ…」
「好きならえっちしたくなるんじゃないの?
一応ああいうシゴトしてたワケだし
割とお客さんからも人気あったんだよ?
その私の誘いをスルーするとか…
ちょっと自信なくしちゃった。
それとも、やっぱり私の事
そんなに好きじゃないのかなーとか…」