第13章 輪廻
「そっか…ありがとな」
頭のてっぺんにキスを埋め、
そう呟くと、ぴくりと身体を震わせた。
涙を含んだ吐息が、俺の胸にかかる。
……ん?
「なら、なんで俺の前から消えたんだ…?
あの最後の日、
そう言えばよかったんじゃねぇの?
俺の気持ち、知ってただろ」
睦を引き剥がし覗き込む。
仕方なしに、ちらちらと目を合わせながら
睦は腹を括ったようだった。
「…あの…失礼なこと言ってたらごめんなさい…
天元は、…お金持ちそうだったから…。
もしあの人に、見つかったら
ダシにされそうな気がして…。
私、そばにいちゃいけないなって…思った…」
悲しそうに、
淋しそうに、そんな事を言う睦が
たまらなく愛しくて、可哀想で…
「お前…そんな…」
言葉もねぇよ。
俺のためにそんな選択をして
自分から離れて行ったっていうのか。
俺のことを想いながら…。
もっと早くに探し出して、
会いに行っていれば良かった。
どんな手を使ってでも、会いに行ってれば…。
俺なんか自分の事だけで…。
勝手に凹んで、死んだモンみてぇな生活してて…
申し訳なさすぎて、それこそ死にそうだ。
「ごめんな睦…
俺がちゃんと気づいてやれたらよかったのに」
「えぇ…?天元は、悪くないのに…」
「…いや、俺が悪ィ。あの時、
傷ついてたのは俺じゃなく、
お前だったんだよな…?」
思い切り抱きしめて
俺は最大級に自分を責めた。
「そ、なことない…。自分から
離れたん、だから…」
「あぁ、…それでも、
俺が気づかなきゃいけなかった。
いけなかったんだ…」
「…天元、…自分を、責めちゃイヤだ…
そんな事させるために…話したんじゃないよぉ…」
うわぁんと泣き出す睦。
なんて女だと、思った。
俺きっと、お前しか見えなくなる。
「…わかったよ、ありがとな。
俺ももうやめるから、お前も泣きやめ。
ごめんな…睦、愛してる」
顔中にキスの嵐を降らせ
睦が落ち着くのを待つ。
触れ合う素肌が心地よくて、
俺はぐいっと全身を寄り添わせた。
可愛い睦。
俺を虜にして、どうするつもりだ?
しばらくして、
やっと少し落ち着いた睦が
「…だいすき…」
そんな事を口走る。