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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第13章 輪廻




優しく、押し付けるようなキスをしてくれた。
オトナのキスとは程遠い、
ただくっつけるだけのキス。
でも、睦の不慣れを象徴していて、
かえって俺を幸せな気持ちにさせてくれる。

「…これで、いい?」

ゆっくり離れながら
震える声で言った。

「…あぁ」

俺からもキスをする。
この先これが当たり前になるかと思うと
俺の心は踊った。
緩く抱き合いながら
確かめるようなキスをして…
睦も逃げずに
一生懸命応えてくれる。

息が上がる前に、唇を離した。
睦は頬を紅く染め、
俺の胸に顔を埋めた。

「…なぁ」

「ん…?」

髪の感触を楽しむように、
何度も頭を撫でてやる。
気持ちよさそうに擦り寄る睦は
猫そのものだ。

「…どうして、店をクビになったなんて
ウソをついた?」

「…あ…っ…」

不安そうに狼狽える睦を
強く抱きしめ直す。

「違う。責めてるわけじゃねぇよ?
ただ、どうしてかと思っただけだ」

俺の言葉に嘘がない事が伝わったのか、
睦はゆっくりと話し始めた。

「…クビになった事にした方が、
都合が、よかったから…。
自分から辞めた、なんて言ったら…
辞めた理由を…訊かれてしまうでしょ…?」

何かに怯えるように、
睦は俺にしがみつく。

「理由は、訊いたらだめか…?」

「……」

「…俺にも話せない?」

「…!」

弾かれるように顔を上げ、
俺の目を見つめた。
悲しげに目を細めたかと思うと、
視線を落とした。

「…す…」

…す?
…話をする踏ん切りがつかないようだ。

「俺には、何でも話せ。
俺も睦には何でも言う。
お前が何言っても、すべて受け止めるから」

そう背中を押してやると
やっと話す気になったようで、
こちらを見据えてから、

「好きな人が、できちゃったから…
もう…続けるの…、ムリ、かなぁって…」

その大きな目に
みるみる涙を溜めていく。

「は…?」

おいおい…それって…

「俺、の…こと?」

睦はこくりと頷いてみせた。
まじで…。

「お前、俺のこと好きでシゴト辞めたの?」

「そう、…っ」

少し怒ったような声。
溢れた涙を拭いもせず、嗚咽をもらす。

あぁ、愛しい…




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