第13章 輪廻
睦にとっては、
男と絡むのは仕事でしかない。
金が発生しない性行為なんてありえない、
くらいの考えだろう。
…って事は、恋、とかはした事ねぇのか。
じゃ、ホントのセックスは知らねぇ…?
いやいや、今はそんな事よりも…
「…金が発生すりゃ売春だし、
しなけりゃ俺が許すわけねぇし…
いや、金あるなしに関わらず許さねぇし、
何にせよアウトだなぁオイ」
俺が上から睨め付けると
「…っひぃ!ご、ごめんなさい!
か、か、可愛い子が1人でい、たから…
こん、な素敵なお兄さんがいるって知ってたら
声なんかかけなかったっスよ!」
「こいつはツレがいるっつってたがなぁ?」
「…へっ?」
「勝手に買わせときゃいいって、
てめぇいいやがったろ。
俺の存在を知らなかったとは、言わせねぇぞ」
「言った言ったー!私言いました!」
はいはいと手を挙げて
入り込んでくる睦。
「…お前はちょっとおとなしくしとけ」
そう言われて少し不満そうにしていたが
俺がよしよしと頭を撫でると、
ふにゃっと笑って俺の腰に抱きついてくる。
……調子狂うなぁもう。
どこの世界に女くっつけて凄む野郎がいんだよ。
それでもそいつはすくみ上がってくれた。
向かってくる勇気もねぇくせに、ナンパなんて
よくできたモンだ。
…まぁ、向かって来たりしたら
それこそ容赦しねぇがな。
「ごめんなさい!殺さないで下さい!」
そいつはいきなり物騒な事を口走って、
人混みの中に紛れた。
…何だって?
「……」
「……」
その場に残された俺と睦は
目を見開いて顔を見合わせた。
ぷっと吹き出した睦は
「確かに、…っ」
と、言った。
「どういう意味だ、ばっかやろう」
俺もつい、笑ってしまう。
「だって、天元だったら
あんな人、ひねり潰しちゃいそうだもん」
あははと声を上げて笑い
人目も憚らず力いっぱい抱きついてくる。
そうして無事、睦を取り返した俺は
大荷物を抱え車までたどり着いた。
トランクに乗り切らないその荷物たちは
後部座席にまではびこっていた。