第13章 輪廻
店先での言い合いに、
周りの客はチラチラとこちらを見て行く。
こいつといると目立つなぁ…。
「…わかった。買ってもらう…」
ちょっと俯き気味で了承した。
「ごめんね…ありがと」
顔を上げてにっこりと笑って見せた。
こんなふうに笑ってくれんなら、
何でもしてやる。
込み上げる愛しさを噛み締めていると、
ぱっと真面目な顔になった。
「…でもお願いがあるんだ」
「何だ…」
そんな真面目な声で…。
「全部、天元が選んでくれる?」
「…俺?」
「うん」
「何でだ。お前の好きなのにすればいいだろ。
まだ遠慮してんのか?」
「違うよ。選んでほしい。
あの、…言いにくいんだけど…笑わないでね。
天元の、好みに、してほしいっていうか…
あ、ごめんね…っ。おかしいな…こんな事
言うつもり、なかったんだけど…」
焦って、つい本音を口にしてしまい、
あちこちに視線を泳がせながら、それでも
一生懸命に思いを伝えてくれる睦が
いじらしくて、愛しくて、…
場所なんか弁えずに思い切り抱きしめたい気分だ。
それを何とか押さえ込み、
俺はやっぱり平静を装う。
「…いいよ。睦がそう言うなら。
ただ文句言うなよ」
戯けるように言ってやると、
ホッと息をついて、にこりと笑ってみせた。
「じゃあ…お前は青が好きだろー?
だから…」
ラックに掛けられた服を
ひとつずつ手に取って眺める。
「……ねぇ私、青が好きなんて話し、した?」
「は…?」
………
「し、て、ねぇな…でも、そんな気がした…」
「…好きだけど…」
何で、こいつは青が好きなんて思ったのか、
自分でもわからなかった。
何となく、そんな……何でだ?
「まぁ、…好きなら問題ないだろ?
青には白かなー。黄色もいいな」
そんな事を言いながら、
睦に当ててみたり
試着させてみたり、俺の方が楽しくなってきて
服のみならず、帽子、アクセサリー、靴にバッグ
ゆくゆくはメイク道具まで買い漁り
睦に怒りながら
ブレーキをかけられる始末。
仕方なしに会計を済ませている間に、
事件は起きた。