第13章 輪廻
「お前こそ、もう俺から離れねぇと誓え。
お前を失ったニ週間、俺もうほぼ死んでたんだぞ」
「ん…ごめん…
もうあなたから、離れ、ない…」
「よそよそしく呼ぶな…
俺の名前、忘れたわけじゃねぇよな…?」
「忘れてなんかない…毎日…呼んで、たよ…
…天元、から離れない…離れたく、ない…」
可愛い事を言いながら嗚咽をもらす。
「…離さねぇ」
頭に唇を押し付けて、
睦の背中をさする。
ほぅっと安心したような吐息。
強く絡みつく細い腕。
「我慢しなくていいから、思い切り泣け。
何時間でも付き合ってやる。
お前はほんとにがんばった。
えらかったな…
ツラかったろ…?もう、大丈夫だからな…」
そうして何度も頭を撫でてやると
更に泣き出して…
…でもそれでいいんだ。
今までの有痛性の心労を吐き出してしまえばいい。
その手伝いを俺ができるなんて
そんな、幸せな事があるだろうか。
俺はきっと、もうすぐこいつを手に入れる。
そんな予感が、俺に幸福感をもたらした。
睦はきっかり2時間泣き続け、
泣き疲れてしまったかと思いきや、
逆に神経が冴えてしまったようだった。
あの部屋で、睦が1人
寒々しく過ごしている姿を想像してしまった俺は
フロに入るよう促した。
お湯をためてやり、
ちゃんとあったまるよう言いつけた。
思い切り泣いた姿を見せた事が
恥ずかしかったのか、やや俯きがちな睦は
そそくさとバスルームに消えた。
しばらくして、
シャワーの音が聞こえて来たのを確かめた俺は…
悪いと思いながら
睦のサイフを取り出し
中を確認した。
これは……
やっぱり、というべきなのか。
睦は、真面目なのだろう。
そして、ごまかしやウソが
うまくない性格なのだと思う。
サイフの中身は113円。
稼ぎのほとんどを、
あの女にきっちり渡していたのだ。
少しくらいちょろまかす事も無く…。
……俺はあのタイミングで迎えに行けた事を
心から良かったと思った。
だって、113円だぞ⁉︎
どうやって、生きて行く?
だめだ、明日の休みは、
丸一日かけて睦に必要なものと
必要はねぇけど睦が欲しがるものを
買いに行こう。