第13章 輪廻
睦はただ俺に抱きしめられて
まだどこか夢の中のようだった。
「…いろいろ勝手な事した。
俺こそ、犯罪まがいの事をした…」
自分のした事を思い出して
「悪かった…」
素直に詫びる。
「…何したの?」
「…お前んちの住所、
店長にテキトーな事言って聞き出して、
お前の母親を勝手に切った」
「…!店長、会ったの…?」
「あぁ、偶然」
「……何を、話したの?」
…アノコトを気にしているようなので、
「クビになったんじゃなく
自分から辞めた事なら聞いたぞ」
「‼︎」
やべぇ!という
睦の心の声が聞こえて来そうだ。
「つまんねぇウソつきやがって…」
「…だって、自分から辞めたなんて言ったら
何で?って思うでしょ…?」
「当たり前ェだろ⁉︎」
「…今は、待って。後で、ちゃんと話、
する、から…」
睦の、涙を予感させる息遣い。
「私は、大丈夫?もう、大丈夫なの、かな?」
不安そうに訊いてくる睦。
俺はただ安心させてやりたくて、
被さるように抱きしめる。
「大丈夫…
俺がいればお前は大丈夫だ。それで、
お前がいなきゃ俺はダメなんだよ」
…あれ。
なんか、言ったことある気がする…
「…それ、言われた事ある気がする…」
同じような事を睦が言った。
「…あぁ、言ったのかもしれねぇな」
「…ん。もっと、言って。大丈夫って…
怖い…んだ。お願い…」
俺の背に手を回し、
睦がやっと俺を抱きしめた。
縋り付くような仕草に、たまらなくなる。
「大丈夫だ。俺がそばにいるから。
怖い事なんてねぇよ…?ずっといてやるから…」
「…っうぅ…」
「睦の不安は、俺が全部請け負ってやる。
お前は俺の腕ン中で、ただ笑ってりゃそれでいい」
「…っ、笑って…?」
「あぁ、俺がそうさせてやる。
大好きだ。睦を、大切にする…」
「…っ…私に、そんな…価値、ある?…」
痛いくらいに抱きついて、
睦は俺に問う。
「そんなの当たり前だろ。
俺にはお前以外ありえねぇんだよ」
「…なんで、そんなに…?」
「そんなんわからねぇよ。
でも、俺が睦を求めちまってんだから
従うしかねぇだろ」